現代自動車(ヒョンデ)は、傘下ボストン・ダイナミクスのヒューマノイドロボット(人型ロボット)「Atlas」(アトラス)を自動車工場に導入しようとしている。だが従業員たちは納得していない──そして労働組合が行動に出た。
7月上旬、ヒョンデはFIFAワールドカップの舞台で、ボストン・ダイナミクスのAtlasがサッカー選手のゴールパフォーマンスを再現するる姿を誇らしげに披露した。ところが今、同社の従業員たちは、人間の仕事がヒューマノイドロボットに奪われないようにすることを訴える波状ストライキに踏み切っている。現在の労使交渉には他の争点もあるものの、ヒューマノイドロボットが引き金となったストライキとしては、おそらく史上初のものだ。
ヒューマノイドロボットが人間の仕事を奪うかどうかという議論は、これまでは未来の話だった。いつか、どこかで、誰かの身に起こるかもしれない──そんな予測にすぎなかった。
だが今週、約3万5000人のヒョンデ従業員が、その抽象論を極めて具体的な現実に変えた。
ストライキの対象は、ヒョンデの世界生産のおよそ半分を担う韓国国内の組立工場だ。交渉のテーブルには賃金や利益配分など複数の争点が載っているが、今回の争議にはこれまでにない要素がある。ヒューマノイドロボットを生産ラインに投入する計画が明確な引き金となった、初の自動車工場ストライキだという点だ。筆者の知る限り、ヒューマノイドの労働参入を阻止することを目的としたストライキは、業種を問わず世界初だ。
労働者たちが実際に求めているもの──ロボット1台の導入にも労使合意を要求
組合が掲げる中心的な要求は、明快かつ率直だ。労使合意なしには、1台たりともロボットをヒョンデの職場に入れさせない──というものだ。
1月、ボストン・ダイナミクスは新型Atlasを発表した。2026年分の生産枠はすでに全量が確定済みで、ヒョンデのロボット・メタプラント・アプリケーション・センター(RMAC)とGoogle DeepMindに向けて出荷されると明らかにした。ボストン・ダイナミクスはあわせて、親会社のヒョンデが、今後数年のうちに自社の生産拠点に数万台規模の同社製ロボットを配備する準備を進めているとも説明した。
続く5月には、ヒョンデが米国を皮切りに、同社と起亜(キア)の工場に2万5000台超のロボットを配備すると発表した。
一方、韓国内の工場への配備時期は何も決まっていない。だからこそ組合は、ヒューマノイドロボットが実際にやって来る前に保護策を固めておこうと、先手を打って交渉しているのだ。何しろ、ロボットがいったん生産ラインに立ってしまえば、そのロボットたち自身がストライキを起こすことはまずないのだから。



