今日、才能ある人材はどこででも働くことができる。ライフサイエンス分野のすべてのリーダーが答えられなければならない問いは、「実績と才能のある人々が、なぜ自社で働きたいと思うべきなのか」である。2021年と2022年に大退職時代が到来したとき、業界全体の企業が優秀な人材の獲得と定着に奔走し、その多くが失敗した。この荒波を乗り切ったのは、強い企業文化を築く取り組みをすでに進めていた組織だった。それこそが、最も強力な従業員価値提案なのである。
優秀人材を引きつけ、定着させる文化を築く
研究開発(R&D)で卓越した成果を生み出す、高度なスキルと意欲を備えた優秀人材は、競争力のある報酬ならほぼどこでも見つけられる。誰もが彼らを採用したいと考えているからだ。しかし、彼らが至るところで見つけられないものがある。それは、自分と共鳴する文化だ。
その整合性は、従業員価値提案の大きな一部を成す。従業員価値提案とは、人がその組織を選び、そこにとどまる有形・無形の理由の集合体である。優秀人材は、自分の声が真に聞き入れられ、価値を認められていると感じられ、知的な刺激を受け、成長のための実質的な機会があり、同僚と意味ある関係を築ける文化を求める可能性が高い。
そうした文化の構築は、リーダーが単に言葉で示すだけでなく、自ら積極的に体現し、組織全体の基準を定めるミッション、ビジョン、価値観から始まる。私は以前、当社が掲げるASPIREフレームワーク(説明責任、科学、パートナーシップ、誠実さ、責任、卓越性)と、それがこのコミットメントに具体的な構造を与え得ることについて書いた。ただし、文化は一度築けば放置してよいものではない。継続的な注意、率直な自己評価、そして見えてきたことに基づいて行動する意志が必要である。
従業員価値提案を継続的に評価する重要性
企業文化は、従業員価値提案の中で最も重要な要素である。ジムの会員権や通勤補助のような福利厚生は、どの企業でも提供できる。しかし、文化を築き、模倣することははるかに難しい。だからこそ、強い文化は優秀人材を引きつける採用上の競争優位を生み出し得るのである。
もちろん、人材を迎え入れることは最初の一歩にすぎない。定着も同じくらい重要であり、そのためには従業員が実際に生き生きと働けているかを定期的に問い直す必要がある。6カ月から12カ月ごとに、適切な問いを用いて深掘りした評価を行うことが欠かせない。従業員は自分の仕事に満足しているか。会社が正しい方向に向かっており、その方向性に自分の声が反映されていると感じているか。上司から必要な支援を受け、仕事に必要なツールを得られているか。その組織を他者に勧めたいと思うか。
この評価から得られた回答は、次の行動につなげなければならない。結果を従業員に共有し、それに基づく行動を目に見える形で示すことが信頼を築く。その循環がなければ、善意から生まれた施策であっても的を外すことがある。最善の意図で導入された福利厚生が利用されないのは、それが価値あるものかどうかを誰も尋ねなかったからかもしれない。このギャップを埋めることは、リーダーシップの継続的な責任である。
働く価値のある場をつくれば、ともに働く価値のある人材が集まる
他社で1万ドル(約162万円)多く提示されたからといって、人は辞めない。しかし、提供されている文化や個人へのサポートに不満を感じれば、人は辞めていく。人を留まらせるのは、目に見えるものだけではない。それは、仕事への高揚感と情熱に満ちた文化――人々が心から共感できるミッション、ビジョン、そしてコアバリュー――を築くことから生まれる。そこにこそ、人が働きたいと思う場所があるのだ。



