2026年FIFAワールドカップ(W杯)が準々決勝に突入するなか、今大会が事前の大きな期待に違わぬ盛り上がりを見せていることは明らかだ。衝撃的な敗退、歓喜の勝利、そして長年世界の強豪として君臨してきた国々が早期に姿を消すほどの激しい競争が繰り広げられている。
グループステージだけでドイツとオランダが敗退した。一方で、小規模な国や格下と目されていた国々が、豊富な資金力やスター選手の力ではなく、徹底した準備とチームワークを武器に勝ち上がった。ピッチ上の名シーンの裏には、スポーツの枠を超えて、特に今まさにリーダーとしての実績を築き上げ、あるいは守ろうとしているすべての人に役立つ、リーダーシップの教訓が隠されている。
1. 高みに登るほど、競争は激しくなる
グループステージ終了後、フランスとアルゼンチンが最も高い下馬評を得ていたが、スペイン、イングランド、ポルトガル、ブラジルとの実力差はわずかだった。かつての王者であるドイツとオランダは、すでに大会を去っていた。
このような状況は、多くの組織や業界、雇用市場の内部で起きていることと酷似している。組織図は上に行くほど狭くなり、残されたポスト(社内昇進であれ、外部からのリーダー採用であれ)をめぐる競争は、キャリアを上がれば上がるほど激しさを増していく。卓越したスキルを持っていることは大前提であり、向上心のあるリーダーが現状に甘んじるのは危険極まりない。自分のパーソナルブランディングをアピールし、人脈を維持し、リーダーシップスキルを磨き続けることに、常に怠りがあってはならない。
2. 引き受ける前に「ガラスの崖」を見極める
チュニジアはサブリ・ラムシ監督をわずか1試合で解任したが、これはW杯史上初の出来事だった。後任のエルベ・ルナール監督は、多くの人がすでに絶望的だと考えていたチームを引き継ぐことになった。
この監督交代は、組織のトップ層で起こりうる「ガラスの崖(Glass Cliff)」という現象を思い起こさせる重要な事例だ(特に女性やマイノリティにとって重要である)。エクセター大学のミシェル・ライアンとアレクサンダー・ハスラムが2005年の『British Journal of Management』誌で発表した研究によると、女性はすでに失敗に向かっている不安定なポジションに登用・採用されやすく、その結果の責任を押しつけられがちであるという。このような状況下でリーダーのオファーを受ける前に、自分がどのような状況に足を踏み入れようとしているのかを事前に徹底的に調査し、慎重に行動する必要がある。
3. 必要になる前に、厚みのある「控えのリーダー層」を育成する
このようなトーナメントで勝ち進むチームは、最強の先発11人だけで勝ち上がっているわけではない。実力ある控え選手層の厚さと、それを支える指導スタッフや体制があってこそ、勝ち進むことができるのだ。
ハーバード・ビジネス・レビューの分析「The High Cost of Poor Succession Planning(ずさんな後継者育成計画の高い代償)」によると、最高経営責任者(CEO)や経営幹部(Cクラス)の交代プロセスが適切に管理されていないことで、S&P 1500構成企業だけでも年間約1兆ドル(約162兆円)もの価値が失われているという。後継者育成計画と同様に、組織における「控え選手層の厚さ」は、必要に迫られたその瞬間になって構築することはできない。その時が訪れる前に、すでに整備されていなければならないのだ。
4. 勝ち負けに関わらず、常に冷静さと気品を保つ
今大会で最も人々の記憶に残る瞬間は、スコアとは関係のない場面で生まれている。カタールのアシム・マディボは、タックルで足を骨折したカナダのイスマエル・コネを病院に見舞った。日本の敗退後に涙を流す日本人サポーターを、ブラジルのサポーターが慰める姿もあった。また、試合中に相手チームの選手が足をつった際、別のチームの選手が伸ばしてあげる光景も珍しくない。これらは最終スコアには反映されないが、そのすべてが評判を形作る。
大志を抱くリーダーにとって、キャリアにおける勝利、挫折、あるいは困難の後に見せる冷静さや気品は、そのきっかけとなった出来事自体よりも長く記憶に残るものであることを忘れてはならない。
5. 「過小評価」を自分の味方にする
カーボベルデは2026年大会で初めてW杯の出場権を獲得し、決勝トーナメントに進出した史上最小の国となった。スペインやウルグアイと同組のグループステージを無敗で切り抜け、最後は延長戦の末にアルゼンチンに敗れたものの、大健闘を見せた。
これまで過小評価されたり、無視されたり、戦力外と見なされたりしたことのあるすべての人にとって、これは素晴らしい教訓となる。期待されていないという状況は、独自の自由と強みをもたらすことがある。その場にいるのが「初めて」の存在だからといって、そこにふさわしくないという証明にはならない。実際には、あなたが発揮する力や影響力は、周囲のよく知られた強豪たちよりもさらに大きなものになり得るのだ。
2026年W杯がリーダーたちに真に教えてくれること
これら5つの瞬間を総合すると、ビジネススクールのケーススタディではめったに扱われないリーダーシップの姿が見えてくる。それは、最高の期待を背負った世界中の観客を前に、プレッシャーの中で発揮される、リアルタイムで試される冷静さと気品だ。
危機が訪れる前に準備すること、澄んだ心で困難に立ち向かうこと、そして結果がどうであれ気品を示すこと。これらはすべて、世界を熱狂させているこの大会だけでなく、日々のキャリアやリーダーシップにもそのまま当てはまる。次にプレッシャーが高すぎると感じたときや、競争相手が多すぎてひるみそうになったときは、このことを思い出してほしい。



