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リーダーシップ

2026.07.19 08:42

猛暑が世界を襲う時代、リーダーが備えるべき「暑さ対策テックスタック」とは

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どこを見渡しても、暑さによる記録更新、警報の発令、あるいは人命の損失を伝えるメディアの報道であふれている。ロンドンでは最近の熱波が、皮肉にも「ロンドン気候行動週間(London Climate Action Week)」の多くのイベントに影を落とした。米国では2億人超が猛暑警報下で祝日を過ごし、米疾病予防管理センター(CDC)は暑さに関連する救急外来受診の急増を記録している。7月初旬、アラブ首長国連邦(UAE)は40日間続くと予測される夏の猛暑のピーク期間に入った。さらに恐ろしいことに、6月初旬のムンバイでは、モンスーンの降雨量が予想を下回ったうえ、過度な暑さが限られた水資源を蒸発させたため、残された水は45日分しかない状態に陥った。

極端な暑さは波及効果をもたらす。気温上昇は、私たちがエアコンの設定を強めることから始まるかもしれない。しかし、自然インフラや人工インフラを損ない、経済的損失を引き起こし、社会的結束を脅かし得る。そして多くのリーダーは不意を突かれている。例えば、コンサルティング会社マーサー(Mercer)によれば、極端な暑さやその他の気候影響に対する自社従業員の脆弱性を評価した企業はわずか4%にすぎない。ある段階を超えれば、屋内にとどまり注意するよう人々に呼びかけるだけでは限界が来る。私たちは人間とインフラ、そして自然環境を積極的に守る必要がある。ここで新興技術は重要な役割を果たすが、私たちは知識のギャップに直面している。極端な暑さのリスクに対処するうえで、ベストプラクティスとなる技術は何なのか。雇用主、公職者、家族、個人が頼れる統合的なマッピングやクリアリングハウス(情報集約拠点)はどこにあるのか。

ほとんどの分野では、時間をかけて何らかのテクノロジーとイノベーションのスタックが形成されてきた。医師は診断ツール、治療法、臨床プロトコルを横断して仕事をする。金融業者は金融商品、プラットフォーム、リスクモデルのアーキテクチャを展開する。ある分野が一定の発展段階に達すると、解決策の全体像について、少なくとも実務上の認識が共有されるようになる。その可視性が、資本の流れ、優先される課題、イノベーションが実装される速度を形づくる。

極端な暑さはまだその段階に達していない。そして、そこへ到達するために残された時間は短い。医師、エンジニア、保険会社、都市計画者、創業者など、リスクと技術の双方の状況を同時に理解している実務家の中核は存在する。そしてその知識は、急速に広く共有される必要がある。

極端な暑さが実際にもたらすもの

極端な暑さは、私たちの多くが認識している以上に深刻で、体系的な影響を持つ。医学誌『ランセット』による気候変動と健康に関する年次報告書「ランセット・カウントダウン(The Lancet Countdown)」の2025年版は、暑さに関連する死亡率が1990年代以降23%増加し、毎年54万6000人が暑さで死亡していると指摘した。

よくある誤解の1つは、熱波を単発で時間的に限られた出来事として扱うことだ。産業医学・環境医学の医師であるマニジェ・ベレンジ(Manijeh Berenji)医学博士・公衆衛生学修士はこう述べる。「私たちは熱波を1つの出来事として扱いがちですが、身体は蓄積を記録しています。危険なのは通常、最も暑い午後ではなく、夜間に涼しくならず体温調整機能(サーモスタット)がリセットされないまま迎える、4日連続の猛暑日なのです」。この累積負荷こそが、2021年の太平洋岸北西部のヒートドームでブリティッシュコロンビア州において1週間で619人が死亡した理由であり、気温が51.8°Cに達した2024年のハッジ巡礼で1300人超の巡礼者が死亡した理由でもある。「慢性疾患と慢性的な暑さは足し算ではなく、掛け算で作用します」とベレンジ博士は付け加える。「意味のある問いは、今日どれほど暑いかではありません。この特定の人物に、過去2週間がどれだけの余力を残したか、なのです」

生産性の損失を含む経済的損失は甚大だ。気候テック企業ギガクライメート(GigaClimate)の創業者兼CEOであるニック・ハラ(Nick Halla)はこう語る。「気温が上昇すると、仕事は止まります。極端な暑さは今世紀を定義するインフラ課題の1つになりつつありますが、多くの人はいまだにそれを気象の問題だと考えています。2030年までに、暑熱ストレスは世界の労働時間を2.2%減少させると予測されています。これはフルタイム雇用でおよそ8000万人分、年間2兆4000億ドル(約389兆円)の経済損失に相当します」

そして、極端な暑さの影響は人間の健康をはるかに超えて及ぶ。インフラはリスクにさらされる。アスファルトは軟化し、送電線は過熱し、地下配管は膨張し、冷房需要がピークに達すると電力網は過負荷になる。電力網が停止すれば、人々は同時にエアコン、医療機器、冷蔵保存が必要な医薬品へのアクセスを失う。暑さは自然環境にも恒久的な損害を与え得る。気温上昇が1.5°Cに達すると、造礁サンゴの70~90%が死滅すると予想され、2°Cでは99%が失われる。山火事のことも忘れてはならない。山火事は必ずしも極端な暑さだけで引き起こされるわけではないが、気温上昇はその助長要因であり、被害はさらに深刻になる。米国科学アカデミー紀要(PNAS)の2025年の研究では、2023~2024年における火災による森林攪乱は、2001年に監視が始まって以来で最大となり、世界全体で2002~2022年平均の2.2倍に達したことが示された。

極端な暑さは連鎖する。短期間のうちに、不快感やイベント中止から急性の健康問題、さらには死、電力網の停止、自然・建造インフラの損傷、社会的不平等の拡大へと進み得る。それは山火事のように見出しを飾ることは少ない。被害はゆっくりと、目に見えない形で蓄積し、突然、不可逆的なものになる。そして悪循環を可能にする。私たちが依存する人工システムと自然システムが弱体化し、破綻するにつれて、私たちのセーフティネットは消滅していく。

知識のギャップと、それを埋める方法

では、知識と解決策のギャップが残り続ける理由は何か。

米国科学者連盟(FAS)の気候・環境担当アソシエイトディレクターであるハンナ・サフォード(Hannah Safford)は、知識のギャップが続く構造的な理由を指摘する。「暑さは急性の脅威として認識されにくいのです。ハリケーンはコミュニティを避難させ、火災は焼け焦げた痕跡を残します。こうした影響は、極端な暑さの影響よりもはるかに伝えやすいのです」。彼女の説明の後半は、より不都合なものだ。「極端な暑さによって生じる苦しみは、深く不平等です。裕福な個人は、エアコンの効いた空間に住んだり、街を離れたりすることで逃れる余裕があります。こうした人々はまた、資本がどこへ流れるか、政策がどのように形づくられるかに対して大きな支配力を持っています」。知識のギャップが残るのは、少なくとも部分的には、それを埋める最も良い立場にいる人々が、その影響を最も感じにくい人々でもあるからだ。

同時に、設計上の失敗も一因となっている。遮熱ソリューションを開発するサーモシェード(ThermoShade)の共同創業者エミリー・ディニーノ(Emily Dinino)はこう述べる。「私たちは機械式冷房にあまりにも依存するようになり、屋内でも屋外でも人々を守る場所を設計する方法を忘れてしまいました。その結果、通勤時、公共空間、屋外の作業現場などで、最もさらされ、最も守られていない人々が特に脆弱な状態に置かれています」

しかし同時に、この問題に活用できるイノベーションの集合は拡大しており、市場投入も進んでいる。この「極端な暑さのテックスタック」は、建造環境と自然環境、人間の健康と安全、そしてシステム全体にまたがる。

各レイヤーがどのように機能するのかを見ていこう。

レイヤー1:センシングとインテリジェンス - 必要とされる解決策は、被害が生じる前に暑熱リスクを検知し、定量化し、伝達するものだ。生理学的モニター、AI予測プラットフォーム、身体的曝露を金銭的指標に変換する分析ツールなどが含まれる。スレートセーフティ(SlateSafety)やヴィジライフ(VigiLife)のような企業は、症状が現れる前に危険な深部体温を警告する。ヴィジライフがロジャース・オブライエン・コンストラクション(Rogers-O'Brien Construction)と実施したパイロットでは、1シーズンで暑さ関連疾患ゼロ、20万ドル(約3240万円)超の節約が報告された。

レイヤー2:建造環境 - 低エネルギーまたはゼロエネルギーの冷却システム、従来型エアコンに代わる低炭素の選択肢、都市規模で周辺気温を下げる介入策のすべてが必要である。サフォードは率直だ。「エアコンへの過度な依存は電力網に負荷をかけ、人々をエネルギー価格の急騰に対してより脆弱にし、地球を温暖化させる排出をさらに生み出すことで悪循環に寄与します」。スカイクール・システムズ(SkyCool Systems)は、米エネルギー省エネルギー高等研究計画局(ARPA-E)の支援を受けた放射冷却パネルによって15~40%のエネルギー削減を実証している。サーモシェードは、交通機関、公共空間、キャンパス、作業現場、イベント向けに、受動的放射冷却と相変化材料を組み合わせ、より涼しい屋外空間をつくるモジュール式の日よけ構造物を展開している。そして経済性も説得力がある。FASの研究によれば、受動冷却に投資された1ドル(約1万未満円)は、1.50~15ドル(約1万未満円)のリターンを生む。

レイヤー3:人間の対応 - どれほど優れた設計の環境でも、曝露される人は残る。ディニーノは端的に述べる。「答えは、屋内に入ることやエアコンを求めることだけではあり得ません。人々はなお、バスを待ち、作物の世話をし、学校に通い、スポーツをする必要があるのです」。メクサー(Mexar)は最前線の労働者と共同設計した気化冷却衣料を開発している。ベクラー(Becklar)のワーカーセーフティ・プロ(WorkerSafety Pro)は、米労働安全衛生局(OSHA)の暑熱基準を満たすため、湿球黒球温度(WBGT)に基づく警報を用いる。一方、コールドベンチャーズ(ColdVentures)のコールドベスト(ColdVest)は、電力を使わずに3分未満で深部体温を最大5度下げる。

レイヤー4:システムと資本 - 暑さへのレジリエンスには、食料が人々に届くか、作物が収穫まで生き残るか、労働者が安全な選択をするための経済的保護を持てるかを左右する経済インフラが必要だ。ナイジェリアのコールドハブズ(ColdHubs)とケニアのソコフレッシュ(SokoFresh)は、太陽光発電による冷蔵保管を拡大している。エリスィット・プラント(Elicit Plant)のバイオスティミュラント(植物成長促進剤)は、4800万ドル(約77億9000万円)のシリーズB投資を受け、作物を暑熱ストレスから守っている。

レイヤー5:インフラのレジリエンス - 社会を機能させる道路、鉄道、橋、電力網は、いまや日常的に超過される気温を前提として建設されたものではない。グリッドビヨンド(GridBeyond)のAIデマンドレスポンス・プラットフォームは、2025年7月にコンステレーション・エナジーとともにPJM市場で開始された。ポリマー改質アスファルトは、米連邦政府のインフレ抑制法(IRA)に基づく20億ドル(約3240億円)の助成金の支援を受け、米国の輸送網全体で拡大している。そしてフォーム・エナジー(Form Energy)の長時間蓄電池は、大規模な電力網バックアップ容量を提供している。

レイヤー6:生態系の対応 - 他のレイヤーと異なり、自然生態系への損害は元に戻せない。コーラル・ヴィータ(Coral Vita)は、人為的進化促進(アシステッド・エボリューション)を用いて耐熱性サンゴを育成しており、修復地点では魚類個体数が倍増したことが記録されている。インテリリーフス(IntelliReefs)はサンゴの定着を促進する人工基質を開発した。米海洋大気庁(NOAA)のコーラル・リーフ・ウォッチ、世界資源研究所(WRI)のグローバル・フォレスト・ウォッチ、アレン・コーラル・アトラスは、世界規模の検知と対応を可能にする監視データを提供している。

そして、暑さのスタックはなお構築途上であり、機会は豊富にある。ハラはこう語る。「ギガクライメートでは、これを世界で最も緊急性の高い課題の1つとしてだけでなく、ますます暑くなる地球で人々の生産性、健康、安全を保つまったく新しい世代の技術を通じて、数十億人の生活を改善し、世界経済を強化する機会として捉えています」

リーダーがいま実行できること

2000年代半ばのクリーンテック1.0は、何が可能かを世界に早い段階で示した。それ以降、より多くの金融資源、人的資本、政策、協業によって、技術的解決策と気候リスク、そして機会の重なりは、より持続的なものになった。気候テクノロジーはいま、真剣な投資カテゴリーである。その中の各セクターは同じ弧をたどった。初期には解決策が何かをめぐる混乱があり、その後、共通語彙の緩やかな採用、バリューチェーン全体への認識、投資仮説の成熟が続いた。気候適応技術はいま、その弧に入りつつあり、極端な暑さは実際、行動に向けた最も差し迫った機会かもしれない。

解決策の全範囲を構築し運用するには、はるかに多くの研究、試験、市場アクセスの経路が必要になる。とりわけディニーノは、導入のためのインフラ拡充を求めている。「より多くのパイロットと現場データ、そして都市や公共機関にとってより容易な調達経路が必要です。資金提供プログラムは、暑さの緩和を不可欠なインフラとして扱い、新技術をより迅速に試験・導入できる道筋をつくることで役立ちます」

暑熱リスクをどのように伝えるかも、このアジェンダの一部でなければならない。何が迫っているのか、どう適応すべきか、どのような保護策が利用できるのかを人々に知らせること自体が、暑さへのレジリエンスの一形態である。幸い、私たちはここでゼロから始めるわけではない。ヘルス・アクション・アライアンス(Health Action Alliance)のExtreme Weather + Workのような団体は、組織が認識から行動へ移ることに重点を置いている。米国科学者連盟のHeatAgenda.USは、州・地方のリーダーが今日導入できる400超のエビデンスに基づく暑さ政策ソリューションを、米国50州すべての事例とともに特定している。クライメート・メイヤーズ(Climate Mayors)は、加盟都市全体で共通のコミュニケーション戦略とレジリエンス解決策を推進するため、Extreme Heat Communications Toolkitを立ち上げた。暑熱リスクに関する明確でアクセスしやすく、実行可能な公共コミュニケーションは、どの技術にも劣らずスタックの一部である。

すべての暑さ対策が明確なROIを伴うわけでも、ベンチャー支援企業を背後に持つわけでもない。国や都市には、なお十分に機能する公衆衛生システム、執行可能な労働基準、そして脅威を真剣に受け止める文化が必要だ。こうした基本要素がなければ、テックスタックの価値は限られる。

どこに建てるか、どこから調達するか、どこで雇用するか、どのように保険をかけるかについて今日下されるあらゆる意思決定は、リーダーが認識しているかどうかにかかわらず、すでに暑さに関する意思決定である。ベレンジ博士の言葉を借りれば、余力が尽きる前に行動せよ。

forbes.com 原文

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