毎年7月上旬になると、わたしたちの会社(USグローバル・インベスターズ)では、その年の上半期(1〜6月)におけるコモディティー(一次産品)のパフォーマンスを反映して「コモディティー・リターンのインタラクティブ周期表」を更新している。少しひいき目かもしれないが、これはコモディティー市場全体の現状を最もわかりやすく俯瞰できる図解のひとつだと筆者は自負している。
今回の内容は実に印象的だ。中東での戦火、それに絡むホルムズ海峡のタンカー危機、近年では類例がないほど激しい金(ゴールド)価格の変動などを受けて、2026年上半期は昨年と様相ががらりと変わった。2025年にほかの資産を圧倒した貴金属が表の底辺に沈む一方、産業用コモディティーとエネルギー関連コモディティー上位に躍り出ている。
リチウムの復活ストーリー
筆者は1年前、電気自動車(EV)ブームの申し子だったリチウムが19%近く下落していることを指摘し、逆張り志向の投資家は注目しておくべきだろうと述べた。その助言に従った投資家は報われたのではないか。リチウムは今年上半期に22%あまり上昇し、わたしたちが追跡しているコモディティーの中で最高のパフォーマンスを演じた。
リチウムの今回の上昇相場と2022年のバブルの違う点は、需要の源泉だ。長らくリチウムの需要を支えてきたのはEVだったが、その市場は現在かなり冷え込んでいる。調査会社のコックス・オートモーティブによると、米国では連邦政府のEV向け税額控除が打ち切られた影響が尾を引き、2026年第2四半期(4〜6月)のEV販売台数は前年同期比で20%超落ち込んだ。
EV向けリチウム需要の減退を補う格好になっているのが、定置型エネルギー貯蔵システム向けの需要だ。これは具体的に言えば、電力網を安定させ、人工知能(AI)データセンターを24時間体制で稼働させ続けるための大規模な蓄電設備のことだ。
蓄電設備向けリチウム需要は2025年に前年比51%増え、伸び率はEV電池向け需要のおよそ2倍に達した。金融大手のJPモルガンは、世界のリチウム需要に占める蓄電設備向け需要の割合は今年30%を占め、2030年には36%まで拡大すると予測している。また、世界最大のリチウム生産会社である米アルベマールは、リチウムの総需要は2030年には現在の約2倍の370万トンに増えると見込んでいる。蓄電設備向けという需要の新たな柱は、リチウムの前回の上昇相場の際にはほとんど存在していなかったものだ。



