ワールドカップへの布石
NFLのライブ配信権を手にする前から、ネットフリックスはすでにアメリカンフットボール関連の番組作りに取り組んでいた。またF1については、ヒット作「Formula 1: 栄光のグランプリ」(Drive to Survive)を長年配信しながらもライブ放映権の獲得には至らなかった。とはいえ同番組の成功はF1の成長を支える重要な要素となり、米国での関心の高まりを追い風に、F1はアップルとのより大型の放映権契約を勝ち取った。
女子ワールドカップまであと1年。それまでの注目は、1999年に女子ワールドカップ優勝を成し遂げた米国代表チームを描くNetflix映画「The 99'ers」に集まることになる。
それだけではない。ネットフリックスにはすでに、この代表チームにまつわるドキュメンタリーが2本ある。1本は、チームが3大会連続優勝を狙った2023年大会の前に公開された「プレッシャーと共に: サッカー女子W杯アメリカ代表を追う」(Under Pressure)。もう1本は、物議を醸したゴールキーパー、ホープ・ソロのピッチ内外の歩みを追い、2024年に公開された「Untold: ホープ・ソロvsアメリカサッカー」(Hope Solo vs. U.S. Soccer)だ。
ワールドカップ4度制覇を誇る米国女子代表は、視聴者に「観てほしい」と売り込む必要がほとんどないチームだ。しかしネットフリックスの側には、来年のワールドカップを自社サービスで観るようファンを誘導する下準備が必要になるだろう。
「The 99'ers」の配信はその取り組みの一環だ。加えて、他国の協会が主催するワールドカップ前の親善試合について、少なくとも米国内の放映権を取得することも一手になり得る。ただ、ネットフリックスにとってあいにくなことに、米国女子代表戦の英語放映権は2030年までターナー・スポーツが保有している。
つまり、(統合会社パラマウント・ワーナー・ブラザース・ディスカバリーがコスト削減に動かない限り)来年のワールドカップに向けた扉はほぼ閉ざされている。ただし、ネットフリックスがその気になれば、2031年大会の直前期に限って米国女子代表戦の放映権を短期取得する道はあり得る。
ほかに狙える競技はあるか
ネットフリックスはこれまで、参入するライブスポーツイベントを厳選してきた。コンテンツ予算の5%という配分を守り続けるなら、この方針は今後も変わりそうにない。
しかもNFLと女子ワールドカップだけで年間予算のかなりの部分が埋まるため、残る枠が向かう先は、それらより小規模な「切り出し型」のイベントになる。折しもリーグ側は、放映権収入を最大化するために試合を小分けのパッケージにして売り出そうと躍起になっており、ネットフリックスのような資金力のあるテック系サービスは格好の交渉相手だ。
ライブスポーツを拡大するなら、まず候補に挙がるのはMLBの試合だろう。ホームランダービーですでに関係ができているうえ、年間1チーム162試合という膨大な試合数を考えれば、一部をネットフリックス向けに切り出しても、既存の地域・全国放映パートナーが痛手を被ることはまずない。
NHLの放映権契約は2027-28シーズン終了後に更新期を迎えるが、ターナー・スポーツが契約を続けない可能性がある。現在ターナーはESPNと並んで試合の半分を担っているが、ネットフリックスがそこまでの規模を引き受けることはないだろう。それでも、NBAカップのような大会形式のイベント(あるいは国別対抗のオールスター企画)がネットフリックスに移る展開は十分あり得る。
カレッジスポーツもライブ配信拡大の有望分野だ。とりわけ、デューク大学がACC(アトランティック・コースト・カンファレンス)のディズニー系放映権パッケージとは別枠でアマゾンとストリーミング契約を結んだ後はなおさらだ。他の有力大学が同じ道を選べば、こうした試合の持つ「イベント性」はネットフリックスにとっても同様の魅力となる。
広告成長に照準を合わせるネットフリックスとスポーツをめぐるニュースは、今後数カ月、数年のあいだ、減るどころか増えていくはずだ。


