2022年以降の欧州連合(EU)の対ロシア制裁の枠組みは、単なる懲罰的手段を超えるものとして構想されていた。それはロシアをけん制するという単一の戦略目標の下で、法的・商業的・外交的手段を整合させることにより、EUが一貫性のある地政学上の主体として行動できることを示すものとして提示された。それから4年以上が経過した今、その野心は明らかにほころびを見せ始めている。問題は個々の措置が破綻したことではなく、枠組み全体が、設計者が過小評価していた内部の矛盾を露呈し始めている点にある。それは、政治的な発言や商業的現実、そして制限措置の最終的な根拠となる法的基盤との間の矛盾だ。
エネルギー制裁の設計と根拠は単純明快だった。EUは、貿易制限、金融取引の停止、個人資産の凍結、価格上限といった措置を包括的な政策に統合することで、欧州の決意を示すと同時に、自ら招く経済危機を回避するための十分な柔軟性を確保しようとした。米国も概ね同様の論理に賛同した。なぜなら、代替案であるロシアの完全な経済的孤立を実現するには、インドや中国との真の意味での多国間協調が必要となり、そのような結果は政治的に決して現実的ではなかったからだ。制裁の目的は、ロシアに関わるあらゆる商業関係を断ち切ることではなく、いかなる政治周期をも超える、持続的な圧力構造を構築することにあった。
勝者と敗者
この措置は大きな成果をもたらした。商品価格の下落により、ロシアが輸出をしても得られる経済的利益は減少した一方で、西側諸国の消費者が受けるインフレの衝撃は緩和された。ロシアでは物価が急上昇し、外貨準備高は減少し、防衛産業基盤を支える多くの原材料が枯渇した。全体として、ロシア経済は低迷している。
こうした代償をロシアだけが負ったわけではない。22~25年にかけての欧州経済への累積的な損害額の推定値は、5000億~1兆6000億ユーロ(約93兆~297兆円)と大きくばらつきがある。米議会調査局(CRS)の推計によると、25年初頭時点で、欧州の国内総生産(GDP)の最大7%が、戦争や制裁の余波から消費者を守るために費やされていた。
だが、ロシアによるウクライナ侵攻開始から数年が経過した現在も、同国の経済と防衛産業基盤は比較的堅調に機能し続けている。最も重要な点は、ロシアが貿易の流れ、特にエネルギー資源の輸出先をアジアや中東の友好国へと方向転換し、資本規制や輸出規制を通じて通貨ルーブルの相場を安定させ、国内の産業能力を動員したことだ。
どのようなバランスが意図されていたにせよ、制裁の影響は不均等に及んでいる。最大の受益者の中には、欧州でも米国でもない国が含まれている。インドは割引価格のロシア産原油の輸入を大幅に拡大し、中国は依存度を高めるロシアと有利な条件で交渉を進め、中東諸国は世界貿易の流れの再編の中で新たな機会を見出した。制裁はロシアにコストを課したが、同時に国際体制全体に商業上の優位性を再配分することにもなった。



