ゴールドウォッチの実際のコスト
高級腕時計において、素材のコストは製造コストの一部に過ぎない。ムーブメント、機械加工、ブレスレットの構造、仕上げ、品質管理、組み立て、流通、保証サポート、小売業者のマージン、そしてブランド価値。それらのすべてが、最終的な販売価格を決める要素となる。
ロレックスの象徴的な「サブマリーナー デイト」を例に考えてみよう。現在、ステンレススチールモデル「126610LN」の定価が1万1350ドル(日本での税込価格168万3000円)であるのに対し、ケースとブレスレットが18金イエローゴールドでそれ以外は同一の「M126618LN」は5万900ドル(同上756万2500円)となっている。つまり、イエローゴールド仕様のほうが4万ドル(約650万円)近く高いということになる。
だが、前掲の表によると、この腕時計に含まれる金の価値は約1万5000ドル(約244万円)。したがって、金の本質的な価値は、この時計の価格の約34%を占める。
腕時計の購入を考える人は、価格を把握するために二次流通市場も確認するべきだ。腕時計の二次流通市場価格を追跡する「ウォッチチャート」によると、これと同じサブマリーナー イエローゴールドは現在、約3万7000ドル(約600万円)ほどで取引されている。新品の定価より約1万4000ドル(約227万円)ほど安い値段だ。そうなると、腕時計に含まれる金の本質的な価値は、時計を得るために支払うコストの約40%を占める計算になる。
このことから、多くのコレクターが中古のゴールドウォッチに魅力的な価値があるとみなす理由が説明できる。
もちろん、すべてのメーカーごとにコスト構造、生産量、そして価格決定力はそれぞれ異なる。パテック・フィリップの「ノーチラス 5811/1G」はその好例だ。
この腕時計には約166グラムの18金ホワイトゴールドが含まれ、その価値は約1万6800ドル(約273万円)と推定されるが、時計の希望小売価格は8万2000ドル(日本での希望小売価格1335万円)。つまり金自体の価値は腕時計の価格の約20%程度を占めるに過ぎない。
しかし、ロレックス サブマリーナーとは違い、ノーチラスの二次市場価格は、新品の定価をはるかに上回る。ウォッチチャートによると、ノーチラスは二次流通市場で17万ドル(約2760万円)を超える金額で取引されている。この値段になると、購入者が支払う金額のうち、金の価値が占める割合は10%を下回る。つまり、この腕時計におけるそれ以外のすべての価値は、生産数が少ないことによる希少性、コレクター需要、そしてパテック・フィリップというブランドが持つ並外れた強さによるものだ。


