実践的知能は採用につながる可能性
これが、組織が実際にこの資質を見極める手法を変えている理由の1つでもある。抽象的な推論能力を測る一連のテストだけに頼るのではなく、多くの組織が現在では状況判断テストを採用している。これは、簡潔で現実的な状況を提示し、候補者に「あなたなら実際にどう行動するか」を尋ねるというものだ。
専門誌『Journal of Applied Psychology』に2022年に掲載された研究では、数十年にわたる人材選考データを再分析した結果、こうしたテストはその後の職務遂行能力をかなりの精度で予測する傾向があることが示された。同誌に2024年に掲載された研究では、このような評価方法をより重視し、従来型の認知能力テストへの依存を減らした採用プロセスは、組織が将来のパフォーマンスを予測する精度にほとんど、あるいは全く影響を与えることなく人口統計上の格差を大幅に減らせることが示された。
この変化は示唆に富んでいる。実践的知能が何であるかについて完全に確立された理論がないにもかかわらず、実務のレベルではこの分野はそもそもそれを捉えるようには設計されていない代理変数から推測するよりも直接測定する方が価値があると判断されたのだ。
こうしたことは、従来のテストで測定される推論能力が重要ではないことを示唆するものではない。だが、推論能力を知能の全てとして扱ってきた1世紀にわたる歴史は常に日常の経験と相容れないものだった。実際のところ、紙の上で最も優れた推論を行う人と、現実の曖昧な状況下で最も優れた行動をとる人が必ずしも同一人物であるとは限らない。
このスキルのうち、同じ状況に長く身を置くことではなく、さまざまな状況における結果に継続的に注意を払うことで培われる、より汎用性の高いタイプは一部の人だけの生まれ持った才能ではない。それは他のあらゆるスキルと同様に、予期せぬ少し居心地の悪い状況を学習を妨げるものとしてではなく「本当の学びの場」と捉えることで積み重ねられていくものだ。


