イノベーションのよりどころは、常に情報だ。ところが現代では、状況が変化し、情報は以前よりも速く陳腐化するようになった。
10年前であれば、組織は、四半期ごとの市場分析や、顧客を対象にした年次調査、過去の業績データをもとにして、戦略的な意思決定を下す余裕があった。しかし現在、競争の場である市場は変化した。顧客の期待が毎週のように変わったり、ライバル企業がAIを使った新機能を突然投入したり、サプライチェーンが予想外の動きを見せたり、ほぼ前触れもなく新たな規制が施行されたりするようになった──役立つ情報の価値が半減するまでの時間が、劇的に短くなったのだ。
実用的なイノベーションを生み出し、持続的に成長するためには、適切な情報が不可欠だ。とはいえイノベーションは、先行者に有利に働く。現代のような環境では、かつてないほど迅速に動かなければ、誰よりも先行して有意義な強みを得ることはできない。つまり、必要不可欠な情報をタイミングよく入手することが、これまでになく重要になる。
多くの意味で、イノベーションはいまや、情報をいかに素早く入手するかという問題になった。
イノベーションは、昔から情報のゲームだった
歴史を振り返れば、いくらでも例が見つかる。スティーブ・ジョブズが2007年に初代iPhoneを発表した時、アップルは単に優れた電話機を発明しただけではなかった。さまざまな分野から集めた情報とデザイン、消費者の行動、タッチスクリーン、ソフトウェア、電気通信、デジタルメディアを統合し、ライバル企業が見落としていたチャンスを見抜いたのだ。
アマゾンが、Eコマースサイトからクラウドコンピューティングのリーダー企業へと生まれ変わったのも、偶然ではない。自社の技術インフラをよく観察し、業界全般のニーズを理解した上で、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)を作り上げ、企業向けのコンピューティングを根本から変えた。
Netflixも好例だ。同社は直感だけに頼らず、顧客の視聴行動やテクノロジーの動向、コンテンツの好みに関する情報を継続して収集し、自己改革を重ねた。そうして、DVD郵送レンタルサービス企業から、ストリーミングサービスへと事業を拡げ、世界有数のオリジナルコンテンツ制作会社へと成長した。
パターンは驚くほど一貫している。イノベーションを起こす企業は、必ずしも他社より多くの情報を入手するわけではない。適切な情報をより早く入手し、それをより効果的につなぎ合わせ、よりスムーズに行動を起こしているのだ。



