研究開発分野も、状況は同じだ。製薬業界などでは、AIを使った変数のテストが行われており、研究者は速やかにプロトタイプを反復しながら改良できる。おかげで、テストプロセスが大幅に短縮され、開発に多額の追加資金を投じなくても、市場に投入できそうな有望なソリューションを見つけられるようになる。この場合、AIを使って試験を行い、情報をスムーズに入手することが、開発コストの削減ばかりか、先行者としての利益獲得にもつながっている。
重要な情報を素早くもたらす上でのカギはもう一つある。それは、パターンを素早く認識できるAIと機械学習の能力だ。これは、新製品に対する顧客の反応や、業界全般のトレンドといった外部からのシグナルが関係する場合には、とりわけ重要となってくる。
幅広い情報源からデータポイントを収集・理解できるツールは、必要性が一層増している。そうしたツールがなければ、リーダーたちは、実際には使えない情報が数多くあるなかで溺れてしまうだろう。
情報をイノベーションに変えるには
個人の場合、チャンスは好奇心から始まる。自分が所属する業界以外の情報にも目を通すことを習慣にしよう。AIを活用する時は、単なる文章作成ツールとしてではなく、思考のパートナーとみなそう。アイデアが浮かんだら、忘れる前に記録し、整理し、再考できるよう、自分なりの仕組みを整えよう。
チームの場合は、知識を共有するルーティンを確立しよう。部門を横断したコラボレーションを促そう。顧客についての気づきや、新しいトレンド、実験や失敗から学んだ教訓を、気軽に口にできる雰囲気づくりを心がけよう。失敗の共有は、特に大事だ。
組織の場合は、企業内のナレッジ・プラットフォームに投資して整備し、従業員が情報にたどり着くまでにかかる時間を減らそう。データのサイロ化が起きている場合は、解消しよう。データの質を高めよう。従業員がAIとうまく協働できるようトレーニングを実施すると同時に、批判的思考と情報リテラシーを強化しよう。
何よりも重要なのは、実行するスピードと同じくらい、学習するスピードについても評価し、報いることだ。
イノベーションはもはや、最高のアイデアを持っているだけでは実現しない。より良いアイデアが、より頻繁に生まれるような環境を作り出すことが重要だ。適切な情報が、適切なタイミングで、適切な人に届くよう心がけよう。
これからの10年で成長する企業とは、必ずしも、研究やAIに最も多額を投じる企業ではない。それは、情報と洞察、そして行動のあいだにある距離を縮められる企業だ。
情報とイノベーションは、完全に絡み合っている
結局のところ、強力なイノベーションは、良い情報から生まれる。そして多くの場合、そうして生み出された強力なイノベーションは、さらに役立つ情報をもたらす。リーダーは、こうした情報を活用することで、継続的に事業を磨き、向上させていくことができる。
AI時代の今、リーダーたちは、情報へのアクセスと正確性を優先させることで、会社を「市場の破壊(ディスラプション)の脅威」から守るだけでなく、自らが市場を再定義する「ディスラプター(破壊者)」側へと進化させることができるはずだ。


