企業が能力を獲得する手段は、もはや雇用だけではない
企業の方も、能力を構築するためには社員を採用する必要がある、という前提に縛られなくなっている。
こうした変化は、企業が雇用関係の境界線を再考しつつある現状に見て取れる。総合コンサルティング企業であるDeloitte(デロイト)が先日、一部の米国社員の福利厚生を削減したことは、全般的なトレンドを反映している。企業は、長期的雇用関係を通じて確保すべき能力と、その他の方法でアクセスする能力のあいだに、明確な線引きをする傾向を強めているのだ。
こうした区別は、戦略的に理にかなっている。企業のAIシフトの鍵を握るのは、往々にして外部のスペシャリストだ。彼らは複数のクライアントと協働し、どの企業も単独ではけっして得られないようなインサイトをもたらす。
コンサルタントの立場で戻ってきた元社員が、極めて中核的な構造改革プロジェクトを率いることもある。彼らには、重要な局面で必要な専門知識やスキルが備わっている。こうした人々は、社員という立場でなくても、知識と経験を通じて企業に恩恵をもたらすことができる。
トップ企業は、必要な能力のすべてを雇用によって確保する代わりに、異なる問いを追究している──社内に構築すべき能力とはどんなものか? 特定のプロジェクトのために導入すべき能力とはどんなものか? パートナーを通じて確保できる能力とはどんなものか? そして、どの仕事がAIで遂行可能か?
これらの問いは、企業内部で稼働するほぼすべてのシステムが前提としていることに、再考を迫るものだ。採用、キャリア開発、パフォーマンス管理、福利厚生、リーダーシップへの道筋、人員計画、エンゲージメント、リテンションはすべて、雇用者と被雇用者という単一の関係を基礎としてきた。人々が企業に所属し、何年もとどまって、壁の内側でキャリアを築くことが前提なのだ。
しかし、企業にとって雇用はますます、能力にアクセスする多くの手段のうちの一つという位置づけに変わりつつある。雇用を唯一の手段とみなせば、企業は、実際の業務において依存している能力の大部分を見落とすことになる。


