Forbes JAPAN 2026年9月号の第2特集は、「新時代のCFO」。「金庫番」から、企業価値を未来へ導く「先導役」へ。今、CFO の役割は劇的な進化を遂げている。無形資産への投資とリターンの可視化、革新的な資金調達、規律あるM&Aなど、日本経済の変革を牽引する「新時代のCFO 」の挑戦に迫る。
5期連続増益と好調な丸井グループ。その裏には、「人への投資」が生むリターンの定量化があった。見えない価値を「見える化」し、企業変革に導く「攻めの財務」とは。
丸井グループの決算が好調だ。2026年3月期の連結営業利益は13%増の502億円で5期連続の増益に。順調なのは絶対額だけではない。注目はROE(自己資本利益率)だ。25年3月期に34年ぶりの10%台を達成。26年3月期は11.6%となっている。もちろん偶然の産物ではない。高いROEは、10年をかけて意識的に狙った結果だった。
丸井グループは貸金業法改正とリーマンショックの影響で、09年、11年と2度の赤字を経験した。経営危機から脱してある程度の利益が出たところで投資家との対話を本格的に再開。従来は財務部のなかにIR担当があったが、15年にIR部を新設した。そのトップに就いたのが、現在、専務執行役員CFOを務める加藤浩嗣だ。
「財務部でIR担当だった2000年当時、話題にのぼるのは売上高や利益などの絶対額でした。しかし対話を再開すると、資本効率が重視されるようになっていた。14年にROE8%以上を企業に求める『伊藤レポート』が出た影響もあったでしょう」
時代の要請もあって、丸井グループは資本効率を高める財務戦略にかじを切る。まず取り組んだのが、最適なバランスシートの検討だ。加藤はこう振り返る。
「わが社はもともと小売りが柱でしたが、エポスカードで金融事業が伸びて事業構造が変化していきました。金融事業にシフトすると、資産の側は店舗などの固定資産から営業債権が中心になっていきます。一方、負債の側は株主資本(自己資本)が厚めで、借り入れは少ないまま。バランスシートを最適化する必要がありました」
具体策のひとつが、10年で約1500億円にのぼる自社株買いだ。継続的な自社株買いの結果、5割程度あった自己資本比率が23年3月期には25%まで低下し、目標水準を達成した。
バランスシート最適化によってもたらされたのは資本効率の向上だけではない。自社株買いが一段落ついたことで、念願の施策を実行に移すことも可能になった。「DOE(株主資本配当率)」の導入である。
株主への配当水準を示す指標としては「配当性向」が一般的だ。しかし配当性向は当期純利益に左右されるため、配当額がブレやすい。一方、DOEは自己資本に対する比率であり、黒字なら自己資本は積み上がるので安定的に増配しやすい。
「BtoCの会社なので、個人投資家を増やして、いずれはロイヤルカスタマーにもなっていただきたい。それには長期安定の増配が理想的で、DOEを早く採用したかった。ただ、自社株買いすると自己資本が調整されて不都合が生じてしまう。3年前に自社株買いを積極的にやるフェーズを脱し、ようやくDOEを導入できた。これからは“ファン株主”を増やしていきたい」



