経営・戦略

2026.07.27 10:30

5期連続増益の丸井グループ、人的資本投資の効果を定量化するCFOの視点

加藤浩嗣|丸井グループ 専務執行役員CFO

「手挙げ制」で企業風土変革

丸井グループは創業100周年に当たる2031年までに、グループ総取扱高10兆円、ROE15%以上、PBR3~4倍という野心的な目標を掲げる。そのために欠かせないのが、無形資産、特に人的資本の活用だ。加藤は人的資本に着目した理由をこう明かす。

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「わが社は20年にわたる停滞期がありました。そこから抜け出すには、過去の成功を再現するのではなく、企業風土から変えていく必要があった。そこで人的資本経営が今のように注目される前から、社員が創造性を発揮して新しいことに挑戦できるような改革を実施していました」

象徴的な施策が手挙げ制だ。例えばアニメ事業やtsumiki証券は、やりたい人を社内で募ってスタートしている。

「以前はPBRが1倍割れでしたが、新しい事業のリターンで2倍近くまで向上。これはまさしく人的資本を含む無形資産が新しい価値を生んでくれたから。PBR3~4倍も、さらに人的資本に投資することで実現可能です」

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人の創造性を引き出す投資が新しい価値を生むという理屈はわかる。ただ、投資する以上、定量的に効果を示さないと投資家は評価しない。特に難しいのは、何を人的資本投資として、何をその投資から生まれた収益とするかだ。

投資は研修費や新規事業の人件費などが対象だったが、議論の末、職種変更1年目の人件費も含めることにした。創造性を発揮するにはさまざまな職種を経験したほうがいい。ただ、異動1年目はパフォーマンスが落ちる傾向がある。その間の人件費は未来への投資として位置づけた。

リターンのほうも簡単には定まらなかった。人への投資はすぐに成果が出るものではないからだ。どう収益を定量化すべきか。それには、かつて加藤がCVCを担当していたときの経験が役に立った。

「スタートアップに投資をするVCも最初は回収が難しく、10年単位でリターンを考えます。具体的にはIRR(内部収益率)という指標で収益を図る。わが社の人的資本投資もこの手法を採用しました」

これまでの成果はどうだったか。17年を起点に、最初の5年間を投資期間、26年までの10年分を回収期間として計算すると、IRRは13.4%になった。これは有形資産投資のハードルレート(最低限超えなければいけない利回り)より上。人的資本への投資は、ひとまず正しい戦略だったといえる。

丸井グループは31年3月期までに人的資本投資700億円を計画。これはDXや新規事業開発の未来投資600億円を上回る額だ。「CFOの最も重要な役割はキャピタルアロケーション(資本配分)」と語る加藤。人的資本への配分を厚くする戦略が今後もうまくいくのか。CFOの腕の見せどころだ。


かとう・ひろつぐ◎1987年、丸井(現・丸井グループ)入社。経理財務・経営企画を経て2013年経営企画部長、15年にはIR部長を兼務。16年から取締役を務めるとともに19年常務執行役員CFO。サステナビリティ・ESG推進を統括。25年4月より専務執行役員CFOとして経営企画・グループFP&A・IR・財務を担当。

文=村上 敬 写真=吉澤健太

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