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経営・戦略

2026.07.17 09:48

AI時代の企業競争力を決めるのは「仕様定義」だ コードの時代は終わった

Adobe Stock

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ボトルネックは上流へ移りつつある

私のキャリアの大部分において、エンタープライズテクノロジーの変革は、ソフトウェア開発のコスト、人材不足、そして複雑さによって制約されてきた。大企業が意味のあるシステムを本番環境に導入するためだけに、プロダクトチーム、エンジニア、アーキテクト、テスター、プログラムマネジャー、資金調達サイクル、リリースガバナンス、そしてチェンジマネジメント(変革管理)が必要だった。それだけのプロセスを経てもなお、事業部門が受け取るのは、自分たちが要求したはずの内容を部分的にしか反映していないシステムであることが多かった。

AIは、この制約を変え始めている。ソフトウェア開発の限界費用が低下し始め、場合によってはゼロに近づくにつれ、根本的な問いは変わる。もはや問題は、企業がソフトウェア構築の費用を負担できるかどうかだけではない。企業が「そのソフトウェアに何をさせるべきか」「業務をどのように変えるべきか」「引き継がれてきた従来のプロセス設計に業務を合わせるのをどこでやめるべきか」を、明確に仕様化できるかどうかである。

この違いは重要だ。何十年もの間、多くの企業は、大規模なソフトウェアプラットフォームに組み込まれた標準化された業務プロセスに、自社の業務を適応させてきた。ソフトウェアが高価で、構築に時間がかかり、保守も難しかった時代には、それは合理的な選択だった。しかし同時に、お決まりのパターンも生み出した。標準プロセスが業務に完全には合わず、例外が増え、その場しのぎの回避策(ワークアラウンド)が生まれ、スプレッドシートが隙間を埋め、処理コストが現場に積み上がっていく。ソフトウェアの開発がより安価で、よりモジュール化され、進化させやすくなるなら、企業は、自社の差別化された業務が実際にどのように行われているかを軸に、より直接的にシステムを構築すべきではないかと、ますます問うようになるだろう。

AIは業務運営の曖昧さを露呈させる

ほとんどのエンタープライズプロセスは、明快に設計されたものではない。長年にわたって積み重ねられてきたものだ。ここに方針が追加され、そこに統制が追加され、規制上の対応が別の手順を生み、システム上の制約が回避策を生み、20年分の組織的記憶を持つ人物がひそかに実質的な「記録システム」になる。時間がたつにつれ、その積み重ねがプロセスと呼ばれるようになる。

そうした環境にAIを適用しても、魔法のように明確さが生まれるわけではない。むしろ、明確さの欠如を露呈させる。ワークフローの理解が不十分であれば、AIは混乱を加速させる。ビジネスルールが暗黙知の中にあるなら、AIはそのギャップを浮き彫りにする。例外処理の経路が文書化されていなければ、AIは早すぎる段階で停止するか、誤った自信を持って行動する。統制ポイントが不明確であれば、AIはガバナンス上の問題を引き起こす。オペレーティングモデルが分断されていれば、AIはより速いスピードでさらなる分断を生み出す。

これが、多くのAIパイロット(実証実験)がデモでは印象的に見えても、本番運用で苦戦する理由だ。モデルは強力かもしれない。ツールは有用かもしれない。プロトタイプは説得力があるかもしれない。しかし企業は、重要な意思決定、ワークフロー、例外処理、統制構造、データ依存関係、責任モデル、そして成果を仕様化するという、より困難な作業を終えていない。これはモデルだけの問題ではない。仕様定義の問題である。

仕様定義がエンタープライズ資産になる

エンタープライズAIの次の段階では、あらゆる大企業が高性能なモデルを利用できるようになる。多くの企業は、同じクラウドプラットフォーム、同じコパイロット、同じエージェント・フレームワーク、同じ記録システムを使うことになる。技術スタックは依然として重要だが、それだけでは十分ではない。ソフトウェアの生成が容易になるなら、価値はソフトウェアという成果物そのものから、そのソフトウェアが何を達成すべきかを定義する仕様へと移っていく。

これは、エンタープライズの優位性を考えるうえで、まったく異なる視点である。問いはこうなる。誰が業務を仕様化できるほど十分に理解しているのか。価値がどこで生まれ、遅延がどこで入り込み、リスクがどこに蓄積し、顧客体験がどこで損なわれ、人間の判断がどこで成果を高め、人間の関与がどこで単にレガシーなプロセス設計を反映しているにすぎないのかを、誰が知っているのか。企業が所有すべきロジック、コンテキスト、評価、統制モデルを、誰が定義できるのか。

ここに、持続的な優位性が生まれる可能性がある。業務知識を明確で再利用可能な仕様へと転換できる企業は、単にタスクを自動化するだけでなく、業務そのものを再設計できるようになる。ベンダー製品に組み込まれた一般化された前提に業務を合わせるのではなく、価値が実際にどのように生み出されているかを反映したシステムを構築できるようになる。やがて、仕様が資産になる。ソフトウェアは、その資産の表現となる。

人材の問いが中心に移る

これは、経営チームにとってより不都合な問いにつながる。この業務を理解している人材は、現在どこにいるのか。多くの企業では、最も深い業務知識を持つ人々が、戦略の中核に十分近い場所にいない。彼らはオペレーション、シェアードサービス、外部委託された業務、あるいはプロセス改善の部門にいるかもしれない。業務が実際にどのように行われているかを知っているにもかかわらず、将来のオペレーティングモデルの設計者ではなく、変革の参加者として扱われることが多い。

そのパラダイムは持続しない。エンタープライズ価値の次の波が、業務を精密に仕様化することから生まれるなら、その業務を理解している人々は、企業設計の中心にはるかに近い位置にいなければならない。彼らは、テクノロジー、データ、リスク、プロダクト、事業のリーダーシップと並んで座る必要がある。何を自動化すべきか、何を拡張すべきか、何を再設計すべきか、何を自社で保有すべきか、何を廃止すべきかの判断に関与する必要がある。

ガバナンスを見る新たな視点

したがって、取締役会と経営陣は、自らが投げかける問いを調整すべきである。AIのユースケースがいくつあるか、何人の従業員がコパイロットを使っているか、どれだけの生産性向上が報告されたかを問うだけでは不十分だ。よりよい問いはこうである。どのワークフローを、再設計できるほど十分に仕様化できているのか。自社のオペレーティングモデルのうち、標準化されたソフトウェアの前提にこれ以上制約されるべきではない部分はどこか。組織内の知識を、再利用可能なエンタープライズ資産へと転換できているか。何がよい状態なのかを定義できる適切な人材が、中核に十分近い場所にいるか。

コードは今後も重要であり続ける。アーキテクチャも重要であり続ける。ガバナンスも重要であり続ける。しかし、ボトルネックは上流へ移りつつある。勝者となるのは、より多くのソフトウェアをより速く生成する企業だけではない。ソフトウェアとAIが支えるべき業務を仕様化し、再設計し、継続的に改善できる企業である。

forbes.com 原文

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