東京証券取引所が基準を引き上げ、出口は狭まる
その間、東京証券取引所(東証)はパイプラインのもう一方の端で外科手術を行ってきた。長年、日本の上場文化は「IPO=卒業式モデル」とでも呼ぶべきものに則って運営されてきた。他の出口を欠くベンチャー投資家が、投資先企業に早期かつ小規模での上場を促し、時価総額数十億円で上場した後、株式は機関投資家から見えない存在へと漂流していった。東証は「上場はゴールではなく、スタート地点である」と決断し、2022年以来、グロース市場の基準を厳格化してきた。しかも本気の牙を伴って──昨年11月末時点で161社が上場維持基準に適合しておらず、今年3月からは改善期間の満了が順次始まり、改善できない企業は上場廃止に至るプロセスに入った。
その結果、俳句に値するようなパラドックスが生じている。日本株は2026年上半期に史上最高値付近で推移した。それにもかかわらず、国内のIPO件数はわずか17〜18件にとどまり、2011年以来で最も少ない水準となった。同じ6カ月間で、香港は約440億ドル(約7兆1400億円)の株式資本を調達したが、その多くは、筆者が1月のコラムで取り上げた中国AI企業の上場によるものだった。日本は、より優れた企業を輩出すると同時に、上場件数を減らしているのだ。
ある種の日本企業──小規模な国内上場では野心が満たされず、非公開のままでいるには資本を欲しがりすぎる企業──にとって、その算式はますます、太平洋の向こう側での華々しいIPOを指し示している。
PayPayが先例を示した
これこそが、筆者が今年の9月に大きな期待を寄せている理由である。
3月、日本の圧倒的なモバイル決済プラットフォームであり、ソフトバンクグループ(9984.T)の投資先企業であるPayPay(Nasdaq: PAYP)がナスダックに上場した。これは日本企業による米国IPOとしては過去約10年間で最大規模であり、評価額107億ドル(約1.74兆円)で8億8000万ドル(約1430億円)を調達した。
さらに、ビザ(Visa、V)、アブダビ投資庁、カタール・ホールディングからのコーナーストーン投資家としての注文が入り、初日の株価上昇という好材料も加わった。地政学的緊張が高まる下落相場で価格決定されたにもかかわらず、株価は上昇して取引を終えたのだ。歴史的に見れば、ナスダックに上場する日本企業は超小型株(マイクロキャップ)であり、アナリストから折り返しの電話をもらうことにも苦労してきた。しかし、PayPayは機関投資家が意味のあるポジションを取れる規模で登場したのである。
これこそが、9月16日に東京で開催される「Japan Go IPO Summit」で我々が議論する内容そのものである。そこでは、日本のグローバルチャンピオン候補として最も信頼できる部類に入るMujinや京都フュージョニアリング(Kyoto Fusioneering)をはじめ、AI、ロボティクス、核融合にまたがる企業の創業者やCFOが一堂に会する。そして、日本企業がどのようにグローバルな成長資本を調達し、資本政策(キャップテーブル)を組み立て、次の舞台を東証にすべきかナスダックにすべきかをどう判断するのかについて、深く議論することになる。1年前ならこれはニッチな話題だった。しかしPayPayのデビュー、東証の「愛の鞭」、そして1兆円のロボット資金の登場によって、もはやそうではなくなった。
見逃せない変革が水面下で進む
これらすべての動きの底流には、より静かな変革が流れている。日本の企業生活を規定してきた戦後の盟約である終身雇用は崩壊しつつあり、非正規雇用者は今年、初めて労働力の40%を超える見通しだ。安定のために設計された企業文化が、礼儀正しく、しかし毅然とした態度で、ベンチャーのスピード感で動くよう求められている。
筆者はこの変革に逆張りする気はない。日本は、他国が何世代もかけて模倣しようとするほどの技術的な奥深さと、決して空洞化することのなかった製造業の基盤を有している。そして今、政府はこれらの資産を次世代のグローバルチャンピオンへと転換するために、具体的な資金と明確な期限を投じている。日本の資金調達および上場インフラが、その産業分野における野望と同じ速度で近代化できるかどうか──それがこの10年間の未解決の問いであり、その答えが導き出されるのを間近で見届けることは、極めて興味深い経験となるだろう。


