何十年もの間、日本は欧米の想像力の中で「未来が最初にやってくる国」として特別な地位を占めてきた。新幹線、ウォークマン、ロボット犬、アポロ計画以上の演算能力を備えた温水洗浄便座などがその例だ。ところが1990年代のどこかで、未来は中国・深センや米国パロアルトへと引っ越したかのように見え、日本は礼儀正しく賞賛されつつも、静かに過小評価される長い期間に甘んじることとなった。
日本政府はどうやら、これ以上過小評価されるのは御免だと決断したようだ。
移民政策や出生率向上では埋まらない人材不足を、AIロボットの大軍で解決
6月30日、経済産業省は「Noetra(ノエトラ)」と呼ばれる新会社を正式に指定した。ソフトバンク(9434.T)、ソニーグループ(6758.T)、NEC(6701.T)、本田技研工業(7267.T)を中核出資企業とする新会社Noetraと産業技術総合研究所の体制を、国産の「フィジカルAI」基盤モデルを開発する事業の実施予定先として正式に採択した。
フィジカルAIとは、電子メールや文章を書くのではなく、工場や倉庫を動かし、いずれはレストランや病院も運営するAI(人工知能)である。政府は5年間で最大1兆円を提供し、初年度に3873億円を投じる。
その資金に付随する数字こそが示唆的だ。赤沢亮正経済産業相は、2040年までに18分野でAI搭載ロボット1000万台を配備することを目指している。これは研究目標ではない。義務づけられた人員数である。
日本の出生率は過去最低に落ち込み、65歳以上の人口は3600万人を超えた。経産省自身の試算では、2040年までにAI・ロボティクス専門人材が339万人不足する。「日本に足りない、あらゆる働き手を代替するロボット」を作る、その作るはずの人材まで足りないというわけだ。移民政策では埋められず、少子化対策キャンペーンでも到底届かない穴が労働市場に空いているなら、労働者を自ら作るしかない。



