本記事の主役は、ワシントン州タコマに暮らすシーパドゥードル(シープドッグとプードルのミックス犬)のバニーだ。サウンドボードを使う動画で、オンライン上に数百万人のフォロワーを集めてきた。
飼い主のアレクシス・ディバインは2020年以降、バニーの語彙が着実に増えていく様子を記録してきた。最初は「outside(外)」と録音されたボタン1つだけだったが、現在では100語を少し超えている。
バニーを単なるインターネット上の物珍しさ以上の存在にしているのは、彼女がそこでとどまらなかったことだ。研究対象になったのである。
カリフォルニア大学サンディエゴ校の認知科学者フェデリコ・ロッサーノは、バニーを「TheyCanTalk」と呼ばれる研究に参加させた。この研究は最終的に、1000匹をはるかに超える犬やその他のペットを含む規模に拡大した。いずれも基本的には同じ装置を使う。床に敷いたマットに複数のボタンが並び、それぞれのボタンを押すと録音された単語が再生される仕組みだ。
なぜ「天才馬」は「話す犬」に先んじるのか
ロッサーノのチームがなぜこのような形で研究を設計したのかを理解するには、120年以上前、ベルリンにいたハンスという馬までさかのぼる必要がある。飼い主で、引退した数学教師だったヴィルヘルム・フォン・オステンは、人々が動物の知能を著しく過小評価していると考え、ハンスに蹄で答えを打たせる訓練を何年も続けた。算数、綴り、さらには特定の日付の曜日まで答えるというものだった。
1904年までには見物人が集まるようになり、ハンスはフォン・オステン以外の人物が質問しても、問題を解いているように見えた。このことは、当時のドイツ政府の教育当局が招集した13人の専門家から成る委員会に「意図的な仕掛けはない」と確信させるものになった。
その後、若い心理学者オスカー・プフングスト(Oskar Pfungst)が本格的な調査を引き継ぎ、変数を1つずつ検証した。質問者がもっと離れた場所に立っていても、ハンスは答えられるのか。質問者自身が答えを知らない場合はどうか。ハンスが質問者をまったく見ることができない場合はどうかを検証した。



