なぜ人間によるストーリーテリングが、これまで以上に求められているのか
アンドリーセン・ホロウィッツが運営するスタートアップ・アクセラレーター「a16z Speedrun」でクリエイター・リードを務めるレスター・チェンも、同様の変化を指摘する。チェンはユーチューブでゲーム部門を率いる以前、同プラットフォーム向けコンテンツを手掛ける初期スタジオの一つであるMachinimaでクリエイターとして活動していた。
チェンは次のように語る。「この1年、AIスタートアップの急成長と歩調を合わせるように、動画やビジュアルによるストーリーテリングが進化していく様子を目の当たりにしてきた。もはや、製品発表動画が制作コストをはるかに上回る成果を生み出せるかどうかは問題ではない。今問われているのは、製品ローンチや資金調達の発表が終わった後も、多様な動画フォーマットを通じて、そのストーリーをいかに発展させていくかということだ。そこにこそ、創業者が他社との差別化を図る余地があり、クリエイターやストーリーテラーがこれまで以上に求められる存在になっている理由がある」。
チェンが言う「求められる資質」は、突き詰めれば作り手のセンスに行き着く。このテーマはマーケティング業界で重要性を増している。筆者がデジタルマーケティングの先駆者であるニール・パテルにインタビューした際も、同様の指摘があった。パテルは、誰もが同じAIツールを使えるようになった現代において、真の競争優位を生み出すのは本質を見抜く思考力や判断力といった、AIには再現できない人間ならではの能力だと主張している。
動画が溢れる中で存在感を示そうとするスタートアップにとって、SMFは極めて重要だ。そうした考えのもと、ルイは動画コンテンツで突破口を開くための4つの指針を提示している。
指針1:動画から始めるのではなく、信念から始める。
自分自身に、「視聴者に何を信じてもらいたいのか」と問いかけてみてほしい。伝えたいメッセージは何か、見せるべき機能はどれかといった視点から入ってはならないのだ。
指針2:感情の核心を見つけ出す。
これは映像制作の基本であり、ブランドづくりの基本でもある。心を動かすもの、空気感、痛み、約束といった目に見えない要素こそが、その後のあらゆるクリエイティブな意思決定の基準となる。


