川邊:もうひとつ、投資の観点でいうと逆のパターンもあって、この銭湯があるからこの街に住みたいと思わせるくらいのものをつくるという方向性ですよね。水がいいとか、景色が圧倒的だとか。今はリモートワークで仕事が完結する人も多いですから、そういう暮らしを具体的にプレゼンされたら、投資してみようという人は出てくると思います。
関根:水は本当に大事で、京都や富山の地下水は入るたびに感動するので、どうしても水道水では勝てないなと思います。小杉湯原宿は水道水を軟水器にかけて柔らかくしていますが、本物の地下水とは別物です。水のいい土地で、その土地の水を生かした銭湯をつくるというのがいちばん本質的だと思っています。
いい銭湯であり続けるために必要なこと
川邊:僕が考える理想の銭湯やサウナの条件がひとつあって、従業員自身が使っているところはいい場所だなと感じます。ITの世界では「ドッグフーディング」といって、自分たちのサービスを誰よりも使い込むという考え方がありますが、リアルの施設では意外と従業員が使わないことが多い。
お客さんが入っているのに従業員が使うわけにはいかないというわけですが、僕はさっきまでタオルを渡してくれたスタッフが湯船に浸かっているのを見ると、「ここはいい場所だな」と思うんです。
関根:小杉湯原宿ではアルバイトのスタッフにも、15分間までは休憩の扱いとせずに業務として入浴してもらっています。混んでいても隙を見て入っていいと伝えています。
小杉湯原宿の湯船は、お湯がいちばん低い温度でも41度あるので、日頃湯船に浸からない方や38度くらいの炭酸泉に普段慣れているお客さんにとっては熱いんです。その「熱い」と思っている様子を、ちゃんと自分の目で見てほしいなと思います。
というのも、銭湯に慣れている自分たちと、初めて来るお客さまとの感覚のギャップを一次情報として持っておいてほしい。譲り合いという暗黙のマナーが初めてのお客さまには通じなかったり、自分たちが伝わると思っていたことが意外と伝わっていなかったりする場面を実際に目にすることで、まだまだやるべきことがあると立ち返ることができます。
川邊:それは僕が一見で行ってもいい場所だなと感じるでしょうね。一度、入りに行きます。
関根:ぜひ。泉州のフェイスタオルと今治のバスタオルがレンタルできるので手ぶらでお越しいただけますし、入浴料はPayPayでお支払いいただけます。ドライヤーだけは10円玉が必要ですが。
川邊:PayPayも使えるんですか(笑)。世の中、変わりましたね。


