Forbes JAPAN 2026年9月号は「次の成長株を追え」特集。日本経済を牽引する「次の主役」は誰か。フォーブス ジャパン編集部は、これまで大企業やスタートアップのランキング特集などを通じて、その担い手の活躍を追い続けてきた。今回、焦点を当てるのは、抜け穴となっていた中小型の上場グロース企業だ。マクロ経済環境が目まぐるしく変化し、株式市場においてもボラティリティの激しさが高まる昨今。相場を主導する大型株や半導体セクターに目が行きがちだが、中小型株のなかには、大きなポテンシャルを秘めた企業が多数存在する。圧倒的な勢いを伴って次なる成長ステージへ加速し始めた企業の可能性を探った。
赤字経営が当たり前だと見られてきた宇宙ベンチャーだが、その固定観念は近い将来、覆されるかもしれない。防衛省からの大型受注を土台に、活躍のフィールドは世界に広がり始めた。
小型SAR(合成開口レーダー)衛星を手がけるSynspectiveは2026年2月、防衛省の約5年間にわたる衛星コンステレーション事業で960.7億円という巨額の業務委託契約を締結した。受注残高は1,243.9億円にまで積み上がっており、26年12月期の連結業績予想は売上高が前年比167.3%増の63.5億円、純利益は26.2億円と、初の黒字化を見込んでいる。同社はSAR衛星のコンステレーションを構築し、取得したデータの販売に加え、データ解析を含むソリューションを提供。世界的な地政学リスクの高まりを背景に衛星データ需要が伸びるなかで、どう成長のかじをとっていくのか。
──2018年の設立から8年が経過し、収益構造が変わってきた。現在をどのような事業フェーズと位置づけているか。
新井元行(以下、新井):まず、宇宙産業全体として、大きなコストをかけてアセットをつくってきた先の出口が見えてきた。世界的な地政学リスクの高まりや分断の進行を受けて、各国の政府による安全保障需要が明確に立ち上がり、欧州でもアジアでも一気に宇宙産業に予算が付くようになってきた。それは事業者からの政府調達と、開発を支援する助成金という両面で見られている。当社としてもその需要に応えるために事業のアクセルを踏んできた。現在はそれがかみ合ってきたという感覚だ。
──防衛省との業務委託契約は、受注額が約5年間で960.7億円と、これまでと比べて桁違いに大きい。
新井:これまでは当社も技術実証のステージにあったため、政府からの受注内容もどちらかというと試験的、実証的なものが中心だった。一方で今回は、政府が明確な顧客となり、その需要にデータの販売を通して本格的に応えていくという位置づけだ。要求レベルも当然高く、国際的な安全保障水準を満たすハイセキュリティなサービスを安定的に供給していかねばならない。そのためには、セキュリティ面で開発が必要な部分をスケジュール通りにクリアすることはもちろん、衛星を安定して製造するフェーズから一歩進んで、生産工程の標準化や拡張性まで意識した基盤づくりを行うことが求められる。製造面では必要となる技術が異なるため、それができるエンジニアも採用していく。収益基盤と事業基盤をセットでつくり込むというのが、この5年間の事業の意味だととらえている。
加えて、当社は30機以上から成るコンステレーション(複数の人工衛星を連携させて運用するシステム)の保有を目指している。防衛省の高度かつ膨大な安全保障要求を満たせるだけの十分なキャパシティを確固たるものにしつつ、その高いデータ生成能力を生かして、デュアルユース(軍民両用)として民間やグローバル市場へも広く展開していきたい。ハイセキュリティなサービスの安定供給がかなう基盤ができた後で、どのように海外で競争していくかというイメージは早期から構想があり、2年ほど前から着手している。



