世界ではトップ2の位置づけに
──海外展開の進捗状況は。
新井:海外では、政府需要を中心に見据えて、日本の防衛省と結んだようなプロジェクトにつなげられるよう取り組んでいる。ローカルの人材を見つけてセールス拠点をつくり、その国の政府や防衛セクターの企業、国際機関などと話をしてパートナーシップを結ぶ準備を進めてきた。現在は、シンガポールと米国のデンバー、近々ドイツのミュンヘンにもオフィスを構える予定だ。
最初のオフィスをアジアで立ち上げたこともあり、昨年はアジア3カ国の政府機関から契約を獲得した。今年は南北アメリカや欧州、中東で精力的に活動しており、じきに立ち上がってくると見ている。欧州ではフランスの航空宇宙大手Airbusやイタリアの地球観測会社e-GEOS、ノルウェー のKongsberg Satellite Services(KSAT)などの著名企業と具体的な商談ができるようになっている。3年ほど前まではカンファレンスに出てプレゼンスを上げる必要があったが、今では会社の説明はほぼ必要なく、競合に対して当社の優位性をいかにアピールするかに焦点が移っている。細かな交渉を詰める段階に入っている国がすでに十数カ国ある状況だ。
──特に安全保障の領域では、どの国も自国の企業を優遇したいはず。小型SAR衛星を運用しているのは世界で5社にとどまるが、通常の衛星データも含めれば相当数の競合がいる。勝算はどこにあるのか。
新井:SARデータは、天候や時間帯を問わず地上観測ができるため、非常に高い優位性がある。また、真に実用に耐えるコンステレーション運用をやっていて、かつ今後も事業として伸ばしていける見込みのある企業は限られており、参入障壁が高くデータに希少性がある。そのため、自国の企業より何より、いかにその技術を取り込めるかが重要視されている。当社が門前払いを受けることはもはやほぼなく、どのように調達につなげるかという具体的な話になってきている。
──小型SAR衛星を運用する5社のなかでSynspectiveの立ち位置は。
新井:事業進捗や事業の拡張計画、海外で獲得している契約の数といった面で、トップ2には入っていると見ている。最も大きな競合はフィンランドの企業。そのため、地政学上の展開を大きく見たときに、各国政府にとっては、NATOに近い技術をとるか、中立性の高い日本の技術をとるかという選択肢になる。日本の立ち位置は、信頼できる同盟国の事業者として各国から受け入れられやすく、また日本の技術ブランドも刺さりやすい。また、当社はもともと日本政府が主導する「ImPACT(革新的研究開発推進プログラム)」プロジェクトからスタートしており、今回の防衛省からの大型案件という実績もあるため、強い説得材料をもっている。
また、当社は取得したデータの販売だけでなく、データ解析によるソリューションを提供している点が特徴だ。その意味で、開拓できる顧客層やセクターが競合と比べて広範にわたるというメリットがある。
──官需が急速に拡大する一方で、民需の立ち上がりは遅れている印象だ。
新井:確かに、マーケットの規模感は安全保障に比べてまだ小さい。安全保障では兆単位の話が出ることもある一方、民需は多くて数百億にとどまっている。というのも、民需は安全保障と違いSARデータの活用ノウハウをもっている産業や企業が少なく、まだまだ需要が顕在化していない。ただ、これから立ち上がっていけば、将来的な市場規模は安全保障よりも断然大きくなり、収益を支える柱になっていく。
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Synspective◎2018年2月設立。夜間や悪天候でも広範囲の地形を観測できる小型合成開口レーダー(SAR)衛星を開発・運用し、衛星データとAIを用いた解析サービスを展開。26年6月時点で10機の打ち上げに成功し、コンステレーションを着実に構築中。25年12月期連結決算は売上高が前年比2.6%増の23.8億円、営業損失が41.4億円。今期は売上高167.3%増、純損益26.2億円の予想で黒字化を見込む。
あらい・もとゆき◎米系コンサルティングファーム、東京大学でのエネルギーシステム構築の研究を経て、社会課題解決のプロジェクトに参画。衛星からの新たな情報によるイノベーションで持続可能な未来をつくることを目指し、2018 年にSynspective を創業。


