経営・戦略

2026.07.25 10:30

「超仕組み化」で年間1000件超をさばくM&Aの新ステージ

小島秀毅|SHIFTグロース・キャピタル 代表取締役

小島秀毅|SHIFTグロース・キャピタル 代表取締役

Forbes JAPAN 2026年9月号の第2特集は、「新時代のCFO」。「金庫番」から、企業価値を未来へ導く「先導役」へ。今、CFO の役割は劇的な進化を遂げている。無形資産への投資とリターンの可視化、革新的な資金調達、規律あるM&Aなど、日本経済の変革を牽引する「新時代のCFO 」の挑戦に迫る。

年間1000件超の案件を検討し、圧倒的なスピードでM&Aを実行するSHIFT。非連続な急成長を支える、買収判断から統合作業までの「超仕組み化」とは。


小島秀毅には忘れられない一言がある。三菱商事にいた小島がSHIFTにジョインしたのは2020年。社長の丹下大はM&Aを重要な戦略のひとつに掲げており、小島は参画後M&A/PMI部門を構築し、責任者として組織を牽引してきた。22年にSHIFTグロース・キャピタルを設立。翌年には10件のM&Aを実現した。その年の上場会社M&A件数ナンバーワンである。

「褒められると思って丹下に報告に行ったら、『全然やってないじゃん』。日本の年間M&A件数は5000件弱。そのうちIT関連で100%あるいはマジョリティを取った投資は550件。その数字を示したら、『そんなにたくさんあるんだから、もっとできる』と」

想定外の反応だったが、小島は肩を落とすどころかむしろ奮い立っていた。ぶっとんだリーダーは、時に常人に理解不能なビジョンを語る。それを翻訳して現実に落とし込み、実現させることに小島は喜びを覚えるタイプだったからだ。

SHIFTのM&A戦略にはふたつの目的があった。ひとつはグループ経営の加速だ。20年当時の売上高は287億円。次の中期成長戦略では1000億円を目指しており、そのためには仲間を増やすことが欠かせなかった。もうひとつはIT業界の多重下請け構造の解消だ。

「本当は大手も従来の構造を問題視していますが、しがらみが多くて変革に踏み切れない。一方、最後発のSHIFTにしがらみはない。自分たちがM&Aするほど世の中は良くなるというのが、丹下が掲げる大義でした」

まず取りかかったのは量の追求だ。質の高いM&Aをやりたくても、M&A市場でSHIFTが認知されていなければ案件が集まらない。質を担保するためにこそ、先にソーシングの量を増やす必要があった。「M&A仲介やアドバイザーがもってきてくれた案件はすべて検討しました。アドバイザーが対象企業を口説きやすいよう、私たちの紹介資料やトークスクリプトを渡したりもしました。失敗もたくさんしましたよ。

お手紙作戦と名づけて対象企業に直筆の手紙を書きましたが、あまり効果がなかった」

23年に10件のM&Aに成功した背景には、こうした泥くさい活動があったのだ。分母が大きくなれば厳選も可能になる。現在、仲介会社などから流入する案件数は年間1000件、そこから秘密保持契約を結んで詳細な資料をもらうのが300件、検討後にLOI(意向表明)を提出するのは30~40件、最終的に成約するのは5~10件だ。

選定基準はどうか。小島は財務情報(売上高、粗利率、修正EBITDAなど)、規律(のれん、EPSなど)、事業内容(ビジネスモデル、技術など)について11のKPIを設定。それらをクリアし、トップ面談でカルチャーフィットできると感じた企業にLOIを出している。型化したのは選定基準だけではない。成約後、決算対応や内部統制などの守りのPMIはパッケージ化。攻めのPMIであるバリューアップも型をつくった。

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文=村上 敬 写真=阿部高之

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