「グループ入りする会社のお困りごとは、『売り上げ』『採用』『デリバリー』の3つに集約できます。それぞれの具体的な課題は以前のM&Aでほぼ経験済み。解決策もわかっているので、SHIFTから担当者をアサインして改善します」
M&Aの経験が増えれば、選定の精度が高まり、バリューアップの手札も増える。そしてそれらを型化して使うことで、より多くの案件を検討したり、効率的にPMIできるようになっていく。SHIFTがこれまでM&Aした件数は累計43件(26年6月末現在)。マイノリティ投資も含めると投資額は総額709億円だ。そのうち100%子会社あるいはマジョリティ投資した企業は現在までグループ内で成長を目指しているが、仮にエグジットしたとして投資リターンを試算すると、 MOIC(投下資本倍率)は3.1倍に。仕組み化・型化でM&Aの量と質を相乗的に向上させてきたことは、数字でも裏づけられている。
PEファンド設立で投資を加速
M&A戦略の目的のひとつだった売上高1000億円は、24年8月期に達成。仕組み化・型化が奏功したことは間違いないが、小島は「型は進化し続ける」とバージョンアップに余念がない。一例は投資判断のKPIだ。
「SI・SESは人月ビジネス。従来はリソースを取りにいくという意味で、『人月』をKPIのひとつに設定していました。しかし、AI活用で“SaaS is dead”が指摘され、SHIFT自身がAIネイティブ企業を目指すなかで、もはや人月は重要な指標になりえない。今は指標を『アカウント』に入れ替え、お客様をもっているかどうかを見ています」
投資の手札も増やした。年間30~40件の意向表明に対して成約が5~10件にとどまっていた要因のひとつは、ファンドに価格で負けることが多いから。ファンドはさまざま金融手法を使って高い価格を提示できるが、事業投資は取れる手法に限界がある。そこで25年にPEファンド設立を発表した。これまで事業投資で取れなかった投資先をファンドで取りにいく戦術は、ロジックが美しい。ただ、小島の強みはスマートさだけではない。
「ファンド案件でのトラックレコードがないから資金調達は苦労しました。金融機関30~40行は回ったかな。断られても打席に立ち続けたことで、資金が集まりだした」
M&A日本一になっても小島を褒めなかった丹下が、幹部の評価会議で「小島さんはやり切り力は半端ない」と評価したことがあるという。リーダーの描くビジョンを翻訳するだけでなく、エグゼキューションに自ら汗をかく。経営者にとっては実に心強いパートナーに違いない。
こじま・ひでたか◎大和証券、GCA、三菱商事を経て、2020年にSHIFTにジョインしM&A/PMI体制を組成して責任者を務める。22年3月にSHIFTグロース・キャピタルを立ち上げ取締役として参画、24年11月に代表取締役に就任。25年2月にSHIFT USAを設立し取締役CEOに就任、海外戦略も統括する。個人でも一般社団法人M&A研究学会の理事などを務める。


