12回目の飛行で起きた問題と、注目すべきポイント
12回目の飛行は米国5月22日に実施され、全体としては順調に進んだ。この飛行では、より強力なエンジンと新型の燃料補給装置を備えた改良型「Starship V3」が初めて投入された。ところが、ブースターが宇宙船から分離した後に2つの問題が起きた。ブースターがまっすぐ飛び続けられずに進路を外れたことと、帰還に向けてエンジンを再点火した際に5基が点火しなかったことだ。スペースXはどちらの問題もすでに解決したと説明しており、FAA(米連邦航空局)も13回目の飛行実施を承認している。
投資家が注視すべき重大なポイントは、次の3つだ。
(1)分離後もブースターは安定して飛び続けられるか:安定した制御下の軌道を維持できれば、機体が回転してしまう問題が解決されたことの証しとなる
(2)エンジンは正常に再点火するか:帰還に向けた再点火に成功すれば、2つ目の問題も解決済みであることが裏付けられる
(3)Starshipは衛星を無事に軌道へ放出できるか:今回の飛行では次世代Starlink衛星20基が搭載され、Starshipが衛星の放出に挑むのはこれが初めてとなる。成功すれば、Starshipは収益化に向けた最初の本格的な1歩を踏み出したことになる
Starshipが開く市場
Starshipは、さまざまな新市場を切り開く可能性を秘めている。
Starlinkの配備
スペースXの次世代衛星「Starlink V3」はFalcon 9に載せるには大きすぎる。そのため、この衛星網を打ち上げる主役はStarshipが担うことになる。これは最も近い将来に見込める需要であり、Starlinkという自社の顧客が最初から存在するおかげで、Starshipは運用開始直後から高い頻度で打ち上げを続けられる。
月・深宇宙への物流
NASAはアルテミス計画の有人着陸システム(HLS)にStarshipを選んでいる。打ち上げコストが大幅に下がれば、月への貨物輸送や月面インフラの建設、深宇宙ミッションの採算は格段に向上するだろう。
軌道上インフラ
スペースXのIPO関連書類は、軌道上データセンターをはじめとする大規模な宇宙インフラを、将来の潜在市場として挙げている。Starshipが約束どおりの経済性を実現すれば、現在の打ち上げコストではとても成立しない、まったく新しいタイプの宇宙インフラに道が開けるだろう。
スペースXの企業価値には、まだ形になっていない市場への期待がますます織り込まれつつある。そのため投資家にとっては、こうした投機的な投資先と、すでに収益を上げている確立した事業とのバランスを取ることが、いっそう重要になっている。規律あるポートフォリオ管理を実践すれば、投資を続けながら、市場ショックの影響を和らげることができる。


