皮肉なことに、ABIの主力ブランドであるバドワイザーは、国際サッカー連盟(FIFA)ワールドカップの公式ビールスポンサーとして今年で40周年を迎えた。だが、バドワイザーはワールドカップの会場だけでなく、ロシアやウクライナのロシア占領地域の店頭にも並んでいる。ABIのロシア事業の売却に向けた動きについて詳細な情報を得るため、筆者は同社に取材を試みたが、回答は得られなかった。
ロシアに納税し、同国の経済の維持に貢献し続けている企業はABIだけではない。スイスの食品世界最大手ネスレは、ウクライナ侵攻開始当初、ロシアでの販売品目を生活必需品のみにとどめると表明していた。ところが、スイス紙NZZの調査によると、ネスレは依然として生活必需品以外の商品もロシアで販売し続けていることが判明した。
米飲料品・食品大手ペプシコも同国での事業を停止すると発表していたが、国際人権団体「ビジネスと人権センター(BHRC)」は2024年、同社がロシアに新工場を開設したと報告した。ウクライナ・キーウ経済大学は同年、ペプシコがロシアに1億2200万ドル(約200億円)の利益税を納付していたことを明らかにした。
米大手ハンバーガーチェーン「バーガーキング」は、ロシアに直営店は一切ないと報告しているが、同国のフランチャイズ事業者が「現時点で(ロシア国内の)店舗の閉鎖に同意していない」という。同社は「ロシアのフランチャイズ事業者に対する運営およびマーケティング活動を含むすべての企業支援を停止し、同国の店舗への供給も停止した。ロシア関連のすべての投資および拡張計画は凍結されている」と説明した。
エール大学の報告によると、国際制裁に従うため、13日時点で1000社以上の企業がロシアでの事業を自主的に縮小している。ウクライナ侵攻開始以来、ロシアでの事業を停止する企業は増え続けている。撤退する企業が増えるにつれ、ウクライナ侵攻を支えるロシア経済が圧迫される。時間はかかったが、プーチン大統領を含むロシアの高官は、自国が軍事侵攻に伴う経済的影響に直面していることを認め始めている。
ウクライナ侵攻がいつ、どのように終結するのかは誰にも分からない。しかし、ロシアは現在、国際制裁や企業の撤退による経済的影響を徐々に感じ始めているようだ。今後、さらに多くの企業が撤退したり事業を縮小したりすれば、同国の経済は一層圧迫されるだろう。


