キャリア・教育

2026.07.25 14:15

森田真生と永井玲衣が語る「10代と世界についていかに対話するか?」

森田真生(左)と永井玲衣(右)。写真=高見尊裕

「来てよかった」と思える場所に

森田:過去約1万1600年の間は、「完新世」と呼ばれる比較的温暖で安定した気候の時代が続いていました。ところが、最近の古気候学の研究によると、たった10万年というタイムスケールで見ても、地球の気候はかなり暴れていたようです。詳しくは中川毅先生の『人類と気候の10万年史』に譲りますが、たとえば完新世以前の最終氷期末期には、数℃にもおよぶ気温の上下が、人間の平均寿命ほど短い時間幅のなかで複数回起こっていたそうです。このような「暴れる気候」のもとでは、農業が成り立たないことはもちろん、今年と同じような来年が続くという想定自体ができません。

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気候も環境も、さまざまなレベルで不確実性が拡大しているいま、現在の延長線上で、何か外的な尺度に合わせて自分を最適化させていくような生き方は、尺度そのものが崩れていく危険と隣り合わせです。むしろ、自分が本当に大切だと思うこと、面白いと思うことを、地道に追求していく方が、思わぬ道が開ける可能性があるのではないか。そもそも何がどうなるかわからない世界において、せめて自分自身に対して正直でありたいと思います。

永井さんがいまいらしてくださっているこの僕の仕事場の庭で、庭師の友人に庭の手入れを初めて学んだ日のことはとてもよく覚えています。彼はその日、ハサミすら使うことなく、ただひたすら目の前で、枯れ葉や花がらを、無駄のない美しい動きで摘んでいきました。庭仕事とは、剪定などの技である前に、まずは「庭をよくしたい、気持ちいい場にしたい」という、シンプルでまっすぐな思いなんだということをこのとき学びました。

10代と対話をするときも、何を伝えるべきか、どう導くか、という小手先ではなくて、まずは冒頭に言ったような、生きていてくれてありがとう、というシンプルな思いがあります。その上で、僕たちがいるこの世界に後からやってきてくれた彼らに、「来てよかった」と思ってもらえる場所を作りたい。それ以上に、僕から伝えるべきことなんてないような気がします。

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