──決算説明会では「市場環境が非常にいい」とも語っていた。
春田:環境は非常にいい。これだけ皆がAIについて知っている時代はなかった。以前は新しいサービスの概念をイメージしてもらうだけで一苦労だったが、今は顧客と当たり前にAIの話ができる。一方で、ビッグテックが新しいサービスを出す速度は速すぎるし、数も多すぎる。顧客はその全部を追い切れていない。だからこそ「エクサウィザーズはどう考えるのか」「どうしたらいいと思うか」と聞いてもらえる。我々の価値が際立つタイミングだ。
相談相手であるためには、自社製品に閉じて答えてはいられない。メンバーには、他社のサービスまで含めて「こう使えばこうなる」と語れる幅を求めている。一方で、グループ各社には尖りをもたせる。コーディングエージェント前提の開発に特化した子会社Exa Frontier Edgeはそのひとつだ。個々の幅と各社の尖りをグループで束ねれば、顧客の大抵の課題に応えられる。
──セグメント別では、AIプロダクト事業が売上高49.1億円(前期比60.9%増)と急成長した。何が起点だったのか。
春田:AIの利活用は顧客のためだけの話ではなく、自社にも当てはまる─そう言い続けてきたことだ。まず自分たちの課題を解くために、複数のAIモデルを全社で安全に使い分ける仕組みをつくった。AIにまつわる課題は当社特有のものではない。「これは他社にも売れるのではないか」
──それがそのまま、法人向けサービス「exaBase AI(エクサベース AI)」になった。ニーズは想定通りあった。
私はもともとBtoCサービスの出身だから、プロダクトを売り、運用する仕事がソリューションとは別物であることはわかっていた。ソリューションは、顧客の要望を聞いてつくる仕事。プロダクトは、「今日は昨日より少し良くなった」という小さな改善を毎日積み重ねる仕事だ。要望を聞いてつくる働き方が染みついた組織のなかでは、この文化は育たない。だから「エクサベース AI」を担う会社は、あえてExa Enterprise AIとして切り出した。結果はすでに出ている。例えば、新しいAIモデルのAPIが公開されてからサービスに反映されるまでの速さは、切り出す前とは比べものにならない。
「エクサベース AI」の課金体系は基本料金プラス従量制だから、使ってもらえるほど売り上げが増える。障害で数時間止まれば、その分だけ売り上げが消える。BtoCでは当たり前のこの緊張感が、BtoBだとどうしても緩みがちだ。それが数字に表れることで、ようやく組織の行動に落ちてきた。そして、ソリューションで得た顧客の課題がプロダクトを生み、プロダクトの利用データがまた次の提案につながる。当社が「AIぐるぐるモデル」と呼ぶこの循環が、ようやく自律的に回り始めた。


