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サイエンス

2026.07.16 18:00

なぜ、人の体毛は一定の長さまでしか伸びないのか

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抜け毛を促す環境要因とは

成長期の持続時間は、遺伝によって決まる部分が大きい。密度の高い毛が長期間にわたって継続的に生えるタイプの人は、比較的長く成長期が続くようにプログラムされた毛包を、遺伝的に受け継いでいるケースが多い。

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ただしこの長さは、遺伝的要素によって一義的に決まるわけではなく、ある程度幅のある期間が定められるだけだ。そして、複数の環境要因によって、この期間のなかで変動が生じ、時には、遺伝で決められていた期間よりもはるかに短くなることもある。

ここで大きな役割を果たすのが栄養状態だ。毛包は人体のなかでも、代謝に関して最も活発に活動する組織の一つであり、タンパク質、鉄、亜鉛、ビタミンB属の一部をかなりの量必要とする。これらの栄養素のどれかが不足するだけでも、成長期の短縮や脱毛の加速につながりかねない。

心理的ストレスは、さらに急激な影響をもたらす。2021年の『Journal of Dermatological Science』に掲載されたレビュー論文によると、こうしたストレスは、「休止期脱毛(telogen effluvium)」と呼ばれる現象のきっかけになることがあるという。つまり、かなりの割合の毛包が、同時に、成長期から休止期に追いやられる現象だ。この急激な変化は、ストレスの原因となった出来事から約2~3カ月後に、目で見てわかるほどの大量の脱毛という形で現れる。

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なかでもホルモンは、毛の成長サイクルに最も強烈な変化を及ぼす要素の一つだ。2022年の『Clinical Dermatology Review』に載ったレビュー論文では、研究者が「アンドロゲンのパラドックス」と呼ばれる現象を取り上げている。

アンドロゲンやテストテロンなどの男性ホルモン、そしてその代謝性誘導体は、頭皮の毛包の成長期を短縮させるが、その一方で、顔に生える毛の毛包については、成長期を伸ばす方向に働く。この異なる効果は、男性型脱毛症(AGA)の根本的な原因となっている。

遺伝的にホルモンの影響を受けやすい人の場合、頭皮の毛包は、血流からやってくるアンドロゲンに反応し、成長サイクルがかなり短縮される。こうなった場合、生えてくる髪の毛は非常に細く、寿命も短いため、目で見てもほぼわからないくらいになってしまう。

あっという間に大量の毛が抜けてしまうようなケースはともかくとして、毛の長さの限界については、生物学的な制約(体にとっての限界)として考えてしまいがちだ。しかし実際には、一定以上に長い毛が生えないよう、積極的に組織化されている。体毛に備わる「成長と休止を繰り返すサイクル」は、何の制約もなく毛が伸び放題になる場合と比べて、より洗練されており、毛は、再生可能なリソースとして、体の部位ごとに、精密に調整されている。そして、生理的な状況に敏感に反応し、科学者がいまだに全容解明に向けて取り組んでいるような、複雑な分子的シグナルのネットワークによって制御されているのだ。

毛の成長がストップするとき、それは、システム上の何らかの欠陥によって限度に達した、ということではない。その現象は、あらかじめプログラムされたプロセスを遂行するタイマーに従っている──そしてこのタイマーは、非常に長い進化の過程のなかで、体の部位ごとに磨き上げられたものなのだ。

forbes.com 原文

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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