Forbes JAPAN 2026年9月号の第2特集は、「新時代のCFO」。「金庫番」から、企業価値を未来へ導く「先導役」へ。今、CFO の役割は劇的な進化を遂げている。無形資産への投資とリターンの可視化、革新的な資金調達、規律あるM&Aなど、日本経済の変革を牽引する「新時代のCFO 」の挑戦に迫る。
CFOとは何か。20年前であれば、「財務の専門家」や「財務責任者」という答えが一般的だったかもしれない。しかし近年、投資家がCFOに求める役割は大きく変化している。CFOは資金調達やIR(投資家向け広報)の最前線に立つことが多い。投資家との対話で問われるのは、決算数値や財務指標だけではない。なぜその事業に投資するのか、なぜそのM&Aを行うのか、なぜその資金を調達するのか──。こうした問いに答えるためには、事業や競争環境、顧客、そして経営戦略そのものを深く理解していなければならない。
言い換えれば、優れたCFOとは財務の専門家であると同時に、キャピタルアロケーション(資本配分)を担う経営者なのである。そして、優れたCFOはCEOを支える重要なパートナーでもある。CEOは未来を描き、新規事業やM&A、新市場への参入など新たな挑戦を推進する役割を担う。その過程では、成功への期待が先行し、リスクが過小評価されることもある。そのときCFOには、CEOに対して率直に異論を唱えることが求められる。
また最近では、知的財産や人的資本、自然資本などの「非財務資本(無形資産)」の定量化もCFOの役割として重視されている。この点については、エーザイで財務担当役員を10年(うちCFOは7年)務め、10年平均でROE10%以上、平均のPBR3倍超えを達成した柳良平氏にコラムで語ってもらった。
Forbes JAPANは、こうした難題に挑戦し、日本経済を動かす戦略的CFOを「新時代のCFO」として、今回4人をピックアップした。
企業文化に投資する味の素
事業活動を通じた社会課題の解決によって創出された経済価値を、次の事業活動へ再投資することで、さらなる社会課題の解決に貢献するという「ASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)」を経営の中心に据え、時価総額6兆円を超える(7月3日時点)グローバル企業へと成長した味の素。同社の変革を財務面から支えてきたのが水谷英一・執行役常務(財務担当)だ。
味の素のROICは大きく改善し、直近の2026年3月期では11.8%となっている。この背景には、23年に従来型の中期経営計画を廃止し、ROIC向上などを軸とする2030年に向けたロードマップへ転換したことがある。味の素は、利益目標だけを積み上げるのではなく、人材資産、技術資産、顧客資産、組織資産といった無形資産を整理し、その強みと課題を可視化したうえで重点的に投資を行ってきた。
人材や企業文化への投資は、投資家から見えにくい。しかし味の素は、それらがどのように企業価値向上につながるのかを可能な限り可視化し、社内外へ丁寧に説明してきた。例えば、無形資産のひとつである人材資産に対して同社は、毎年エンゲージメントサーベイを実施し、「志への共感」「顧客志向」「挑戦」「生産性向上」が、一人当たりの売上高・事業利益に相関があることを確認し、これらをさらに上がるよう取り組んでいる。ROICの向上は、短期利益だけを追求した結果ではない。無形資産への継続的な投資が、最終的に高い資本効率として結実したことを示している。
(続きは7月24日発売「Forbes JAPAN 2026年9月号」でご覧ください。)



