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スポーツ

2026.07.17 17:15

2026年W杯が突きつけた現実─トランプとFIFAによる私物化、超資本主義と分断された世界

stock.adobe.com

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1998年6月21日リヨン、FIFAワールドカップ・フランス大会のグループステージで、アメリカとイランが激突した。両国は1980年以来国交を断絶しており、事前の緊張はピークに達していた。イランの最高指導者ハメネイ師は事前の握手を拒否するよう命じ、一方でビル・クリントン大統領は両国の疎遠な関係を終わらせる一歩にしたいという政治的な期待を寄せた。

しかし、ピッチに立った選手たちは普通に握手を交わし、記念撮影に応じ、そして純粋にサッカーというスポーツに没頭した。イランが2-1で歴史的なワールドカップ初勝利を収めた後も、ファンたちは「政治家が関係を台無しにしただけで、我々には関係ない」と笑い合った。スポーツが政治の壁を超越した、象徴的な瞬間だった。

それから28年後の2026年、アメリカ、カナダ、メキシコが共同開催する今回のワールドカップは、リヨンの夜のような牧歌的な光景を許さなかった。出場枠は48カ国に拡大され、国際サッカー連盟(FIFA)はこの大会を「スーパーボウル104回分」に匹敵すると豪語。6月11日(日本時間12日)の開幕からひと月、間もなく7月19日(同20日)にニュージャージー州メトライフ・スタジアムでの決勝を迎えようとしている現在、そこに浮かび上がっているのは、純粋なスポーツの祭典というロマンティシズムではなく、極限まで肥大化した「超資本主義」と、生々しい「地政学的な分断」という現代社会の縮図だ。

「ダイナミックプライシング」が暴いたスポーツ商業化の極致

2026年大会の最大の特徴は、徹底的な「アメリカ化」と資本主義の論理だった。ハーフタイムショーの導入といったエンターテインメント要素の強化もさることながら、最も象徴的なのは「ダイナミックプライシング(変動料金制)」の導入だ。

アメリカの国内プロスポーツでは一般的なこの価格システムは、需要やタイミングに基づき、現在ではAIがチケット価格を弾き出す仕組みとなっている。しかし、国内リーグであれば足繁く通う地元ファンを保護するための価格上限が設定されるが、世界中から一過性の客が集まるワールドカップにおいて、その歯止めは存在しなかった。結果として、大会直前にはFIFAの公式転売プラットフォームで決勝戦のチケットが230万ドル前後(約3億7300万円)という目を疑うような価格で出品され、世界的な批判を浴びた。インファンティーノ会長はこの報道を一笑に付し、「もしそんな値段で買う人がいたら、自分がホットドッグとコーラを届けに行く」とジョークで受け流したが、批判は収まらなかった。最下層のカテゴリーであっても、グループステージの試合には数百ドルから数千ドルの値がついていた。

もっとも、この価格設定は一本調子で高騰し続けたわけではない。実際には大会が近づくにつれて市場が反応し、グループステージの転売価格の中央値は2月から5月にかけて3割近く下落するなど、需要と供給に応じた調整も同時に起きた。皮肉にも、この乱高下自体が、FIFAのチケット販売戦略の不透明さそのものを浮き彫りにした。

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文=松永裕司

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