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経営・戦略

2026.07.15 15:32

15年の経験が教える、成長企業のためのカスタマーサポート論

stock.adobe.com

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グローバルなカスタマーサポート業界での15年の経験から、私が学んだことがある。それは、何も言わずに去っていく顧客こそが、ビジネスにとって最大の脅威の一つになり得るということだ。顧客からの不満に対して、マニュアル通りの硬直した対応をすれば信頼を失う引き金になりかねない。しかし、共感を持った対応を一度でも行えば、その顧客を一生のブランド支持者に変えることができる。

劣悪なカスタマーエクスペリエンス(CX)によって顧客を失うのは、企業が考えている以上に容易なことだ。クアルトリクスの調査によると、ネガティブな体験をした消費者の53%が、そのブランドでの消費をやめている。また同社の調査は、劣悪なCXがもたらす損失額が増大していることも示している。2022年、世界中の組織が悪い体験によって失うリスクのある年間消費額は3兆1000億ドル(約503兆円)と推計されていたが、2024年にはその額が3兆8000億ドル(約616兆円)に達した。比較のために挙げると、後者の数字は英国の国内総生産(GDP)を上回っている。

長年にわたり私が学んできたのは、企業が顧客を失うのは、顧客を軽視しているからではないということだ。多くの場合、システムの適応が追いつかないほどの急成長が理由である。チームは過負荷になり、ナレッジは散逸したままとなり、昨日まで機能していたカスタマーサポートのプロセスが、規模の拡大に伴い突如として機能しなくなるのだ。

成長がシステムを追い越すとき

少し前、私たちが提携していた企業の一社が、まさにこの課題に直面した。彼らのモバイルゲームが世界的な人気を博し、ユーザー数が急増してチームは事業拡大の準備を進めていた。しかし、新たな満足した顧客が増える一方で、何千人もの不満を抱える顧客も現れたのである。

当時の同社には、その膨大な問い合わせを効率的に処理するために必要なシステムがまだ備わっていなかった。中央集約されたナレッジベースはなく、トレーニング用の教材も作成途中で、サポートチームはビジネスの適応スピードを上回る速さでの対応を余儀なくされた。成功を祝うどころか、ひたすら消火活動に追われることになったのだ。

これは珍しい状況ではなかった。これまでのキャリアを通じて、私は同様のケースを数多く目にしてきた。急速に未処理案件(バックログ)が積み上がると、顧客の信頼は揺らぎ始め、ブランド体験が損なわれ、ビジネス全体にプレッシャーがかかるようになる。

このような経験を通じて、私は確固たる信念を抱くようになった。カスタマーサポートはコストセンターではない。顧客維持、信頼、そして長期的なブランド価値を牽引する重要な要素なのだ。業務上のプレッシャーに直面している企業に必要なのは、「顧客中心主義」に関する形ばかりのプレゼンテーションではない。成長が危機に陥る前に、それを管理・制御するための実践的なシステムである。

そのゲーム会社にとって、目下の最優先事項は極めて明快だった。サポート業務の規模を拡大して体系化し、未処理案件を減らし、応答時間を大幅に改善することだ。そうすることで、危機は解決された。

より本質的な疑問

そのゲーム会社での経験から、私はより本質的な疑問を抱くようになった。これほど多くの企業が同じ課題に直面し続けているというのに、なぜ未だに同じ教訓を一から学び直しているのだろうか。なぜカスタマーサポートのリーダーたちは、試行錯誤を繰り返しながら基本原則を発見し続けているのだろうか。

考えれば考えるほど、この業界における最大の課題の一つは人材不足ではないと気づいた。それは、予測可能なミスが深刻な痛手(コスト)に発展する前に、それを未然に防ぐための「手軽に利用できる実践的なナレッジ」が不足していることなのだ。

この気づきによって、最終的に私たちの会社は、ナレッジの共有と教育により意識的に注力するようになった。興味深いことに、私自身がカスタマーサポートの世界に足を踏み入れたのは、教師になるための勉強をしていた時期だった。振り返ってみると、この2つの世界には予想以上の共通点があった。教えることとリーダーシップは、どちらも同じ問いへの回答を迫る。すなわち「自分自身が十分に理解した上で、他人にわかりやすく説明できるか」という問いだ。知識の伝達は、物事を真に習得しているかどうかを測る最も効果的なテストである。

私たちは、あるシンプルな問いに焦点を当てた。「もし今日、誰かがカスタマーサポートのリーダー職に就任したとしたら、初日に伝えるべき最も重要なナレッジとは何か」ということだ。この問いによって、私たちは一時的なトレンドと普遍的な原則を切り分け、技術やプラットフォーム、ワークフローがどう変化しようとも、価値を持ち続ける教訓は何かを特定することになった。

15年に及ぶカスタマーサポートの経験をわずか数個の教訓に凝縮するのは容易ではないが、極めて一貫して不変であり、すべての成長企業が心に留めておくべき原則がいくつかある。

カスタマーサポートにおける「普遍的な原則」とは

カスタマーサポートの教訓のなかで、何よりも重要なものが一つある。それは、持続可能な成長は「事後対応」よりも「事前の準備」に大きく左右されるということだ。急成長の波を最も見事に乗りこなす企業とは、危機を最も早く解決する企業ではない。そもそも危機が発生しないような体制をあらかじめ構築できている企業なのだ。

自社のCX(顧客体験)部門の未来を考えるリーダーにとって、以下のいくつかの原則は現在もその価値を証明し続けている。

• 日常的な緊急事態の解決から、それらを未然に防ぐシステムの特定と構築へと意識を移行させる。

• チームのために、中央集約型のナレッジベースを構築し、トレーニングを実施する。

• サポートシステムの規模拡張は、成長期の本番を迎えてからではなく、成長が予測される段階で行う。

• カスタマーサポートをコストセンターではなく、顧客維持と信頼を獲得するための推進力として位置づける。

最後に、基本を忘れてはならない。明確なコミュニケーション、共感、説明責任、そしてナレッジの共有。これらはすべて極めて重要である。周囲のテクノロジーがどのように変化しようとも、これらの価値が変わることはない。

おわりに

現在行われているプロセスの多くは、数年も経てば古いものに感じられるようになるだろう。カスタマーサポートは急速に進化しており、AIはその変革をさらに加速させている。しかし、私はこれを問題としてではなく、進歩の兆しとして捉えている。変化し続ける環境において、企業にはより強固な土台が必要とされる。プレッシャーのかかる状況下で、より迅速に学び、迅速に適応し、より適切な意思決定を下せるようなシステムが求められているのだ。

カスタマーサポートに15年携わってきたが、問題を解決することには今でも価値があると考えている。しかし、繰り返される問題を未然に防ぐことには、それ以上の価値があるかもしれない。最終的に、ビジネスの成熟度を示す最も強力な指標の一つは、経験を「共有可能なナレッジ」へと変換できる能力である。継続的な学習の上に成り立つこの仕事において、それこそがカスタマーサポートを会社とともに成長させる原動力となるのだ。

forbes.com 原文

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