Forbes JAPAN 2026年9月号は「次の成長株を追え」特集。日本経済を牽引する「次の主役」は誰か。フォーブス ジャパン編集部は、これまで大企業やスタートアップのランキング特集などを通じて、その担い手の活躍を追い続けてきた。今回、焦点を当てるのは、抜け穴となっていた中小型の上場グロース企業だ。マクロ経済環境が目まぐるしく変化し、株式市場においてもボラティリティの激しさが高まる昨今。相場を主導する大型株や半導体セクターに目が行きがちだが、中小型株のなかには、大きなポテンシャルを秘めた企業が多数存在する。圧倒的な勢いを伴って次なる成長ステージへ加速し始めた企業の可能性を探った。
今年3月に防衛事業への本格参入を表明したテラドローン。市場の関心は一気に高まり、株価は一時、年初来9倍にまで急騰した。実戦地で得た果実をもとに、「世界一」を掲げる連続起業家が圧倒的スピードで挑む。
ウクライナの冬は厳しい。1月の首都キーウは最高気温でさえ氷点下であることがほとんどだ。Terra Drone(テラドローン)を率いる徳重徹は、雪の舞うウクライナで新年を迎えられるよう、2025年のうちに日本を発って現地入りした。
今年はドローン勝負の年。絶対にものにしてみせる──。元日の朝4時、人気のない街を運転しながら、徳重は気持ちを奮い立たせていた。
ロシアによる侵攻以来、ウクライナの空港は閉鎖されている。当然、日本からの直行便はない。ポーランド経由で片道35時間。空路・陸路を駆使して新年をウクライナで迎えることにこだわったのは、ある種の験担ぎだった。
徳重は10年、「日本発のグローバルメガベンチャー」を志して、電動バイクメーカーのTerra Motors(テラモーターズ)を創業した。目をつけたのはアジアの電動三輪市場だ。しかしフィリピン、ベトナムと立て続けに失敗。夢がついえかけた14年、一縷の望みをかけて進出したのがインド市場だった。
「絶対に成功させるという思いで、年初から意気込み、1月3日にインドに行きました。結果的にその1年で売り上げは一気に2億円から10億円になった。今でもテラモーターズはインドの電動三輪でトップシェアです。今回の新規事業の防衛ドローンは、インド進出以上に壁が厚い。元日をウクライナで過ごしたのは、あのとき以上に頑張ることを自分に誓うためでした」
実戦地で見たドローン防衛のリアル
徳重がドローンビジネスに目をつけてテラドローンを立ち上げたのは16年だ。ドローンを測量や点検、農業に活用するソリューション事業と、多数のドローンが空を飛ぶ時代を見越して、ドローンを航空機のように運行管理するプラットフォーム(UTM)を提供する運航管理事業が二本柱。26年1月期は売上高が前期比7.8%増の47.8億円、営業損失は11.4億円とまだ赤字だが、特に運航管理事業では、ヨーロッパを中心に10カ国で導入実績のあるUTM会社を傘下に収めており、世界No.1への期待は高い。
その絵図が描けたところで徳重は新たなドローンビジネスの検討を始めた。軌道に乗り始めた事業は他人にある程度任せられるが、ゼロイチはアントレプレナーの領域。徳重は新たな可能性を探るため、ひとりで情報収集を進めた。
そのなかで興味を引いたのが防衛ドローンである。ウクライナ侵攻以降、ドローンが戦争を変えたという話がたびたび取り沙汰されるようになっていた。



