「神風が吹いた」
テラドローンはアメイジング・ドローンズと迎撃ドローン「Terra A1」の共同展開に着手した。供給側では一歩前進だったが、問題は顧客側である。各国の防衛官庁や装備を納める防衛プライム企業の門は固く閉ざされていた。日本の防衛省にも50回ほど足を運んだが、反応は鈍かった。徳重はもともと防衛産業のカルチャーがスタートアップ向きではないことを理由に参入を躊躇していたが、あながち間違いではなかったのだ。
事態が急変したのは2月末だ。アメリカとイスラエルがイランに対して軍事作戦を開始。イランがホルムズ海峡を封鎖し、湾岸諸国にシャへドを飛ばし始めた。
徳重はこの潮流の変化を「神風が吹いた」と表現する。元寇で苦戦していた鎌倉幕府を救ったといわれる神風である。
「軍事衝突から約2週間で、イランからアラブ首長国連邦(UAE)には1946回の攻撃がありました。その約8割にあたる1627回がシャヘドによる攻撃です。これほどの回数は想定していなかったから、湾岸諸国の迎撃ミサイルはすぐ不足気味に。世界の軍関係者や防衛プライム企業は、数で勝るドローンに対抗するには、こちらもドローンを用意するしかないと気づいたのです」
ゲームチェンジの波は遠く離れた日本にも届いていた。防衛省は無人機で多層的に沿岸を防衛する「シールド構想」を推進していたが、シャヘドの運行距離は約2000キロ。東アジアやロシアからなら日本全体が射程圏だ。沿岸防衛だけでは日本を守れないという現実を目の当たりにして、迎撃ドローンの採用を本格的に検討し始めた。
アメリカ・イスラエルとイランの軍事衝突以降、LinkedInで世界中の防衛プライム企業にアプローチしていた徳重のもとに、続々と反応が返ってくるようになった。ドローンは進化が早く、重厚長大な組織では対応しきれない。防衛プライム企業は自社の防衛システムに迎撃ドローンを組み込もうと、迎撃ドローンのスタートアップに声をかけて始めた。潮目が変わったのだ。調査会社の米MarketsandMarketsは、今後5年間で世界の防衛ドローン市場規模がCAGR(年平均成長率)25.7%で成長し、31年には1092.2億ドルに達すると予測している。
一方、開発にも進展があった。「Terra A1」が実戦でシャヘドの迎撃に成功。4月には、その映像を公開した。また、アメイジング・ドローンズに続いて、ウクライナの防衛スタートアップであるウィニーラボに出資を決め、固定翼でより広範囲で迎撃可能な「Terra A2」の共同展開を開始。これも6月に実戦でシャヘド迎撃に成功している。


