起業家

2026.07.24 08:30

「年内に勝負が決まる」テラドローン徳重徹が狙う防衛ドローン世界一

徳重 徹|Terra Drone代表取締役社長

「話を聞くたびに関心をもって調べるのですが、調査してみると、『防衛産業は防衛プライム企業が牛耳っている』『軍の調達は入札なので時間がかかる』『輸出規制があってスケールしにくい』といった実態が見えてきて……。可能性を感じて調べては、スタートアップには向かないとわかって諦める。それを4~5回繰り返して躊躇していました」

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決心がついたのは25年5月だ。自衛隊を退職してドローン業界団体の日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の参与となった人物から、防衛省内で防衛ドローンへの関心が高まっていると聞き、とにかく飛びこんでみることにした。

ただし、参入の切り口は簡単に見えてこなかった。ひとくちに防衛ドローンといっても、用途や機体の種類はさまざま。世界中の防衛やドローン会社に片っ端からヒアリングしたが、どこにチャンスがあるかつかめなかった。

徳重は思い切ってウクライナに行くことを決めた。第二の都市リヴィウでは9月末に防衛産業の展示会が予定されていた。ウクライナは戦時下で社内からは反対する声も上がったが、とにかくヒントになるものが欲しかったのだ。

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「私も不安はありました。背中を押してくれたのは、戦後の起業家たちの生きざまですね。私が最初に起業した当時は、まだ戦争体験をした経営者がまだお元気でした。いろいろ話を聞くと、みなさん事業に対する覚悟がすごかった。その源は何かと考えたら、おそらく戦争体験でしょう。自分も本物の戦争を知ることで腹がくくれるかもしれない。日本が将来戦争に巻き込まれたときにその経験を生かしたいという思いもあって、ウクライナ行きを決めました」

初めて訪れたリヴィウでは、市民が普通に生活しているように見えた。ただ、ところどころに戦争の影響が見て取れた。展示会場は攻撃対象になるおそれがあるため場所は秘密。当日、明かされた会場は、万が一攻撃されても人的被害の少ないスタジアムだった。出展していたのは、ウクライナの防衛スタートアップ約120社。もともと防衛産業が盛んな国ではなかったが、戦争でさまざまな産業がストップ。中小企業で働いていた人たちが生活するために防衛産業に流れてきたという。

人々のたくましさを感じる一方で、失望も覚えていた。120社のうち約8割はドローン会社であり、ドローンが戦争の主役であることは間違いがなさそうだった。ただ、ほとんどがFPV(一人称視点)の突撃型ドローンだった。

「FPVは中国製の部品を組み立てているだけ。コモディティだと当社が参入する意味がない」

それでも諦めずに会場を回るうちに、目に留まった機体があった。マルチコプターでも固定翼でもない、ロケット型ドローンだ。話を聞くと、開発中の迎撃ドローンだった。

「ロシアからはイラン製攻撃ドローン『シャヘド』が次々に飛んできます。当初はそれをミサイルで撃ち落としていましたが、ミサイルは高価で数も限界がある。一方、ドローンは低コストで量産が可能。その利点を生かしてシャヘドを迎撃するドローンの開発が進められていましたが、どの会社もまだ迎撃には成功していなかった。ビッグプレイヤーがいない領域なら、挑戦する価値がある」

帰国後すぐパートナー探しを始めた。迎撃ドローンを開発中のスタートアップはウクライナに約5社。そのなかからバリュエーションが高くなく、日本からグリップを握れることを条件に絞り込み、筆頭だったアメイジング・ドローンズとM&Aの交渉を開始する。

ディールが成立したのは26年の年明けである。アメイジング・ドローンズへの出資は、やっと見つけた突破口。ディール成立の直前、徳重が現地で新年を迎えるという験担ぎを試みたのも無理はなかった。

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文=村上 敬 写真=ヤン・ブース ヘアメイク=内藤 歩

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