第1回 M&A究極のインサイダー情報は「売却した社長が残留しているか」
過去100社以上のM&Aに導き、その後の成長支援も続けてきた安藤智之が、M&Aを活用している上場企業について事業価値が向上していく(=成長する)企業とそうでない企業の差を分析、さらに経営者・投資家の読者向けに、M&A専門家ならではの目線で「この会社はM&A戦略がうまい!! 今市場から評価されるポイントはこれだ」を解説する。
M&Aという言葉を聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。「事業承継の手段」「成長戦略」「投資」や「時間を買う」など様々な答えがあるかと思います。どれも間違いではありませんが、私にとってM&Aの本質の一つは「優秀な人材を仲間に引き入れること」に他なりません(※売買金額で50億円以下のM&Aを想定しています。数百億、数千億円のM&Aは別の意味を持つことが多いです)。
M&Aはなぜ行われるのか
ビジネスにおいて、ゼロから組織を構築するよりも、すでに形を成している企業を買収する方が圧倒的にスピードは早い。しかし、そこで手に入れるべきは「事業」そのもの以上に、「経営の再現性」を持った人材、つまり経営者です。私自身も経営者の端くれとして様々な活動をしていますが、いかに「再現性の高い仕組みを作るのか」「働いてくれている社員の人たちをどうまとめていくのか」には日々苦慮しています。
その中で、「もっとこんなことがしたいけど、〇〇が不足しているから自社単体では時間がかかりすぎる」という想いから、M&Aで売却し自分の会社をもっと伸ばしていきたいと思うことは多々ありました。ここから先、ぜひとも「自分の会社を売却される社長の気持ち」を想像して読み進めてもらいたいです。もし読者の皆さんが、自社を成長させるためにM&Aをした場合、どんな相手に会社を売却されるでしょうか。
過去に会社を売却したことがある経営者の経験と、長年M&Aを支援してきた立場という目線から、明日から使える「M&Aで成長する企業を測る物差し」をお伝えします。
究極のインサイダー情報を探せ
投資家の方が喉から手が出るほど欲しい「企業が成長するという強い根拠」。実は、誰でも見られるIR資料の中に「究極のインサイダー情報」が存在する、私はそう考えています。それは、「会社を売却した社長が、買収後も現場に残っているか」という一点です。
先ほど、「会社を成長させるためにM&Aで売却する」という経営者がいることをお伝えしました。
ここで話をM&Aの成立前、つまり、交渉の場に転じたいと思います。
会社を売るときには、1社の買手企業とだけ交渉をするケースもありますが、多くのケースでは複数の買手企業を候補に挙げて交渉を進めます。
「自分のやりたいことは誰と組むと実現できるだろう??」
多くの情報を集め、会話を重ね、実際の現場を見て、理念を確かめ……。最後は「この人たちと一緒に働きたい」と思えたときにM&Aの決断に至ります。これは、私自身が会社を売った経験からも言えることです。



