では、「成長する会社の特徴」は?
では、成長する会社の特徴を見ていきましょう。会社の成長は様々な要素によって構成されています。市場や商品の優位性、仕組みや文化など、各企業が「勝つ理由」を必死に創り上げるのが企業経営の側面にあります。「M&Aは時間を買うものである」としばしば表現をされますが、創り上げたものを買うという意味ではそうだと思います。つまり、創り上げることが出来る人を手に入れることこそが、成長を促す大きな要素になるのではないでしょうか。
これをM&Aを支援してきた立場から紐解いていきます。M&Aには「ロックアップ」と言われる条件が入れられることがあります。今回のケースで言えば、「譲渡企業の社長が3年間代表取締役として継続勤務すること」などです。5年や10年のロックアップもありますが、多くは3年以内です。つまり、買収後3年以上期間が経った上で、会社に残り続けているのであれば、それはロックアップ期間を過ぎても残っている可能性があるのではないか、という推論に至るというものです。
買収から数年経ち、統合の摩擦や現実の壁にぶつかった後でもなお、売った社長が残っている場合は、「この会社やグループが、もっと成長すると思っている」からではないでしょうか。もしインタビューなどで売った社長が前向きに発信していたとすれば、きっと充実しているからではないでしょうか。もしそうなら、それは会社の内部を知っているキーマンの重要なシグナル、つまり「究極のインサイダー情報」です。その会社を誰よりも熟知している経営者自身が、新しいグループを「魅力的だ」「ここでならさらに大きな夢が見られる」と確信して、自らのポジションをそこに置き続けている可能性は高いです。
もちろん、この事実が全てに当てはまるわけではありません。後継者不在を理由に売却をすることや、病気・家族の事情などで売却されることもあります。よって、まだまだ働き盛りの年齢の社長が残っているケースはこれに当たると思います。「このM&Aで、買手を利用して、自社を大きくしてやる」という強い想いがあり、裏を返せば「この買手は利用する価値がある」と判断しているというものです。
M&A後のリアルな気持ち
「会社を売ったら燃え尽き症候群になってやる気が出ない」
これもまた、売却されたオーナー経営者のリアルな感想としてしばしば耳にします。残って働こうと思ったが、「一国一城の主」でなくなってしまったことから、何とも言い難い虚無感や靄がかかった気持ちになり、それが原因でロックアップ期間満了にて退任をするというものです。もし読者の皆さんが会社を売った社長であれば、そのお気持ちは想像できるのではないでしょうか。
こういったことから見えるのは、ロックアップ期間後も売手社長が残っている場合は、買手の経営陣が、魅力的で一緒に働きたいと思える器を持っている可能性があるかと思います。さらに言えば、そのグループが伸びる可能性があるということを人間関係的にも察知できる要素なのかもしれません。
また、違う観点から見てみたいと思います。M&Aで会社を売却するということは、「成功者の証」と言われます。リスクを冒して経営者としての道を進み、長年の仕事を資産に変えた。それが上場企業相手であればなおのこと、成功者として証されるものです。ここから考えられる「買手の成長可能性の見つけ方」は、買収をしている企業のホームページにあります。
売却をされた社長は、成功者であり、多額の資産を築いた可能性が高いため「恰好の営業の的」になり兼ねないという事実です。上場企業のIRには、買収金額を非開示にすることもありますが、保険や投資商品、高級商材など様々な営業が飛んできやすいです。これを嫌い、自身の経験を世の中に広げたくないと仰る方もいらっしゃいます。もしも譲渡した社長による自身の売却ストーリーなどが載っていたら、それはその会社を応援したいという気持ちが、こういった営業されるということを上回ったからではないでしょうか。きっとその買手グループが伸びることを示唆する物差しの可能性があるのです。
複数の条件を組み合わせて「物差しの精度を上げる」
ここまで「成長企業を見つける物差し」を簡単に説明してきました。
ただ、M&Aという切り口から、さらに沢山の物差しが生まれます。
例えば業種です。企業各々で当然に差はあれど、業種によっては企業の収益の源泉が「仕組依存」になりやすい業種と、「社長依存」になりやすい業種があります。例えば、調剤薬局の場合であれば、経営者の資質によって病院やクリニックとの関係を構築できるものの、一定以上に「出店している薬局の立地条件(=仕組みとして確立しているもの)」に今後の事業継続性が委ねられやすい業種もあります。そうなると、社長が残ってもらうメリットは、「社長がいなければ困る(=社長依存)」と比較して大きくないこともあります。
社長の経歴、創業時期、数年間の企業規模や成長率、社員数や過去の事務所移転歴など、様々なことを掛け合わせることで、「この会社は何故売ったのか??」を紐解けます。実際に私たちM&Aを支援する立場の人は、特定の上場企業のM&Aが上手いかどうかを調べるために、「M&Aで買収した企業」の推移を企業調査会社などから取り寄せ、その成長推移を調べることで、「この上場会社はM&Aが上手い(可能性が高い)ので、お相手様として非常に良いのでは」と、売却を検討されている企業の社長に提案をしています。
今回はM&Aという商取引を通じて、「成長する企業の見極め方」を簡単に説明しました。これらが全て相場にフィットするとは限りませんが、参考にしていただければと思います。


