「機内食」は、頻繁に旅する人々にとってお決まりのネタになっている。近年では、多くの乗客が自分で食べ物を機内に持ち込むようになったが、それでも美味しく感じられないという声が絶えない。確かに、特にエコノミークラスの機内食は良く言っても平凡なものが多いが、実は問題は食事そのものだけではなく、環境にもある。飛行中に食べると、味が悪く感じられてしまうのだ。しかし、それは避けられない運命ではない。次回搭乗する時から、持ち込み食であれ機内で提供される食事であれ、機内食を美味しくするための即効性のある簡単な秘訣がある。その秘訣とは、ノイズキャンセリング・ヘッドホンだ。
ノイズキャンセリング・ヘッドホンが機内食を美味しくする秘訣なのか?
ばかげた話に聞こえるだろうか。だが、著名な腫瘍学者であり、医学部教授、ベストセラー作家(『The End of Illness』)、そして長寿研究の有力施設であるエリソン・メディカル・インスティテュートの共同CEOを務めるデビッド・アグス医師にとっては、そうではない(筆者は最近、アグス氏とエリソンに関連するパームスプリングス、ハワイ、メキシコの消費者向けヘルス&ウェルネスリゾート「Sensei」についてForbesで執筆した)。
アグス氏は著書『Book of Animal Secrets』の中で、宇宙旅行が人体に及ぼす影響について学ぶためにNASAのエイムズ研究センターを訪問した。その研究の副産物として得られたのが、この機内ヘッドホンの秘訣だった。彼はこう書いている。「大きな騒音があると、食べ物の塩味や甘味の感じ方が抑制されてしまう。飛行機の低く響く音が脳を圧倒し、その結果、味覚が鈍る経験は、皆さんも一度はしたことがあるだろう。しかし、機内でノイズキャンセリング・ヘッドホンを装着すれば、味をよりよく感じることができる……ぜひ試してみてほしい。その効果には驚くはずだ」
筆者は実際に試してみたが、確かに効果があった。しかしこの簡単な旅行ハックの皮肉なところは、直感的には私たちがまさに逆のことをしがちだという点だ。特に、はるかに美味しい料理が提供される国際線ビジネスクラスやファーストクラスなどのプレミアム客室では顕著だ。これまで筆者は、機内食で名高いカタール航空(先日Forbesで取り上げた)やターキッシュ エアラインズといった、機内食で常に受賞している航空会社で食事が運ばれてくると、映画を見るのをやめ、ヘッドホンを外し、豪華で凝った食事サービスを楽しむことに全神経を集中させていた。しかし、機体後方のエコノミー席(筆者が通常搭乗する席)でも、食事の際はエンターテインメントを止めていた。そしてこれは、まさに間違った行動なのだ。正確には、映画を止めることが問題なのではなく、ノイズキャンセリング・ヘッドホンを外すことが問題なのだ。
オックスフォード大学のチャールズ・スペンス教授は、同校のクロスモーダル研究所の初代シェフ・イン・レジデンスを務めた人物であり、この主題についてかなり詳細で徹底した科学的な意見論文を発表している。教授によれば、乗客が地上にいる時よりも機内でブラッディ・マリー・ミックスを注文する率が圧倒的に高いという、以前から指摘されてきた興味深い航空現象の理由は、「うま味豊富なトマトが、飛行中にさらされる大きな背景騒音の影響を比較的受けにくい、数少ない基本味の1つだから」だという。教授はまた、「最近の研究で、大きな騒音が特定の基本味の知覚を抑制することが明確に示されている」と指摘し、特に甘味と塩味は「大きなホワイトノイズ(飛行中の背景音)の存在によって著しく減退する」と述べている。ニューヨーク・マガジンのデジタル・フード・サイト「Grubstreet.com」はより率直に評した。「研究によれば、機内食がまずいのは、機内の騒音のせいかもしれない」
2010年、英国の「インディペンデント」紙は「Science finds the plane truth about in-flight meals」という特集記事を掲載した。同紙の科学編集者はその中で、「機内食がなぜ説明しがたいほど味気ないのかは、何世代にもわたる旅行者が高度3万フィートで思案してきた。いま、その説明が提示された。航空機の客室内で聞こえるような『ホワイトノイズ』を聞いていると、人は味覚を失うことを示す研究である」と書いている。さらに悪いことに、飛行機のエンジン音が特定の味覚を鈍らせるため、航空会社はこの既知の影響に対抗しようと、レシピに塩分や糖分を余分に加えることが多い。どちらも健康に良くない。
料理専門サイト「TastingTable.com」は、この点を最も簡潔に説明している。「ユナイテッド航空の無料の塩味スナックミックスであれ、エミレーツ航空の長距離便ファーストクラスで出る牛ヒレ肉のフライパン焼きであれ、空の上ではすべてがどこか少し違って感じられる。機内食が本質的にまずいからではない。むしろ、飛行機の中では私たちの風味の知覚が実際に変化するのだ。そして不思議なことに、『機内での食欲』への対策は調味料を足すことではなく、実はノイズキャンセリング・ヘッドホンなのである」
音を遮断することは、いまや機内食をすばやく改善する方法として広く受け入れられている。だが、音楽を流すことは実際にはさらに効果的で、食事をより引き立てる可能性があるという証拠も増えている。英国の先端的な料理人で、ミシュラン3つ星の伝説的シェフ、ヘストン・ブルメンタールが、客にiPodを装着させ、海の音を聞かせながらシーフード料理を食べさせて話題を呼んだのと同じことだ。しかもそれは地上での話だった。
機内食を美味しくする秘訣は、より優れたノイズキャンセリング・ヘッドホン
幸いなことに、頻繁に旅する人の多くは、お気に入りの機内持ち込みバッグや快適な服装と同様に、良質なヘッドホンが飛行機旅の必須ツールであることをすでに認識している。背景騒音を軽減する鍵となるのは、質の高いノイズキャンセリング機能である。これは「アクティブノイズキャンセリング」でしか得られない。「パッシブ」を謳うヘッドホンやイヤホン型モデルは忘れたほうがよい。オーバーイヤー型ヘッドホンは、一般に騒音の遮断に優れ、装着感も快適だ。そして、音楽とノイズキャンセリングを組み合わせれば効果がさらに高まるというなら、音楽再生でも優れた音質を発揮するモデルを選ばない手はないだろう。
筆者は月に何度も、しばしば長距離国際線に乗るほど頻繁に飛行機を利用する。機内ではテレビや映画をよく見るし、最近はオーディオブックにもハマっている。その結果、20年以上にわたってハイエンドのノイズキャンセリング・ヘッドホンを常用してきており、市場に出回っている名だたる主要モデルのほとんどを試してきた。筆者のお気に入りは、新登場のBowers & Wilkins Px8 S2ワイヤレス・ノイズキャンセリング・ヘッドホンだ。Bowers & Wilkinsはスピーカーとヘッドホンだけを専門に手掛けるハイテクオーディオ企業であり、その技術力は非常に高い。Px8 S2は、栄誉ある2026年iFデザイン賞を受賞したばかりで、信頼できるテクノロジー専門サイト「TechRadar.com」からは「Headphone of The Year」に選ばれた。
旅行用途において、このモデルには他を圧倒する2つの特徴がある。1つは、1回の充電で地球上のほぼすべての場所に到達できる30時間のバッテリー寿命(万が一のためのUSB-C急速充電にも対応)、もう1つは、他の多くのモデルのように長時間使用しても耳が痛くならない、柔らかいナパレザー製イヤーピースによる極上の快適さだ。その他の部分は耐久性を重視してダイキャストアルミニウムで作られており、これは、混雑したバックパックに日常的に詰め込まれるような他の多くの高価なモデルで、筆者が不足していると感じていた要素だ。さらに、数多くのハイテク機能も備わっている。8つの独立したマイクが、環境に応じて調整可能な優れたマルチレベルのアクティブノイズキャンセリングを提供し、通話品質も非常に優れている。音楽再生においては、24ビットDSPと40mmカーボンコーン・ドライブユニットによる高解像度オーディオに対応しており、専用アプリからは直接音楽ストリーミングを利用できるほか、5バンドイコライザーも搭載されている。AppleのMFi(Made for iPhone)とGoogleのFast Pairの両方に対応し、aptX Lossless Bluetoothを使用している。
こうして筆者は最近、機内エンターテインメントも機内での食事も、以前より楽しんでいる。だが、好みのヘッドホンが何であれ、優れたアクティブノイズキャンセリングを備えているなら、機内食をよりおいしくする秘訣を発見する道をすでに歩み始めている。



