スマートフォンやタブレットを機内に持ち込むようになって以来、客室内には「何かを視聴するならヘッドホンを着用する」という緩やかな社会的暗黙の了解が存在していた。
しかし近ごろ、その期待は必ずしも守られていない。客室乗務員からは、飛行機の狭い客室内で、音を出したまま(時には大音量で)TikTokをスクロールしたり、番組を視聴したり、ゲームをプレイしたりする乗客の姿がますます報告されるようになっている。
こうしたなか、ユナイテッド航空はこのマナーを、強制力のある規則へと変更することにした。
ユナイテッド航空は先日、運送約款(乗客が航空券を購入する際に同意する法的文書)を改定し、旅行者が個人用デバイスで音声を聴いたり動画を視聴したりする際にヘッドホンの使用を義務付けた。2026年2月27日に発効した改定ポリシーに基づくと、「音声や動画コンテンツの視聴中にヘッドホンを使用せず」、乗務員の指示に従うことを拒否した乗客は、機内から降ろされるか、将来的に同社の便への搭乗を禁止される可能性がある。
今回の改定により、この行為は、酩酊、喫煙、わいせつまたは不快な服装、脅迫的な行動、乗務員の指示に従わないことなど、航空会社が輸送を拒否できる他の理由と並ぶ扱いになった。言い換えれば、問題は騒音そのものだけではない。客室乗務員が音を消すかヘッドホンを着けるよう求めたとき、乗客が従うかどうかである。
客室のエンターテインメント環境の変化も、このルール改定の背景にある。ユナイテッド航空を含む各航空会社は、機内の接続環境を急速にアップグレードしており、個人用デバイスからのコンテンツのストリーミングがかつてないほど容易になっている。ユナイテッド航空は、スペースXの「スターリンク(Starlink)」による高速衛星Wi-Fiを全機材に導入しつつあり、これにより客室内でのストリーミング視聴が大幅に増加すると予想されている。
「当社はこれまでも、音声コンテンツを聴く際にはヘッドホンを使用することを推奨してきた。また、当社のWi-Fi利用規則でもすでにヘッドホンの使用を促している。スターリンクの拡大に伴い、これを運送約款に追加して、より明確にするのに適した時期であると判断した」と、同社は声明で述べている。
一部の旅行者は、この動きを遅きに失したと見ている。航空券の格安情報アプリおよびニュースレターを運営する「Going(ゴーイング)」の旅行専門家であるケイティ・ナストロは、筆者宛ての電子メールで次のように述べた。「これは、罰則を伴うものではあるが、ここ最近の航空会社による施策のなかでは、乗客に配慮した最も優れたポリシーの1つと言えるかもしれない。他人の通話や映画、ポッドキャストなどの音を聞かされることほど嫌なものはない。私たちは飛行機に一歩足を踏み入れた瞬間、パーソナルスペースを放棄していることを忘れがちだ。これには物理的な空間だけでなく、聴覚的な空間も含まれる」
マナーの専門家であり、ポッドキャスト番組「Were You Raised By Wolves」の共同司会者でもあるニック・レイトンも、この意見に同意し、メールでこう語った。「自分のエンターテインメントを楽しむ権利は、隣に座る見ず知らずの人に迷惑をかけない範囲に留まるべきだ。これがルールであり、これまでもずっとルールだった。かつて『一般的な礼儀』と呼ばれていたものを、わざわざ明文化しなければならないのは残念なことだ。だが、そうせざるを得ない状況なら、受け入れるしかない。少なくとも私個人としては、他人のNetflixの再生リストを8時間も我慢して聞かされるのは御免だ」
ユナイテッド航空は、このルールをどの程度厳格に適用する予定であるかについては明らかにしていないが、このポリシーにより、客室乗務員が乗客に対して音量を下げることやヘッドホンの使用を求める際の明確な権限が事実上与えられることになる。また同社は、自社の機内(特にシートバックのエンターテインメントシステムを搭載したフライト)ではすでにヘッドホンが幅広く提供されており、乗客が自身のヘッドホンを持参していなくても入手可能であると指摘している。
現時点で同社は、このポリシーが運送約款が乗客の行為を規定する「航空機の機内」での行動を明確に対象としていることを示している。ユナイテッド航空は、空港ラウンジ(独自の利用規約やマナーガイドラインの下で運営されている)や搭乗口付近のエリアにまで、このルールを適用する予定はないとしている。



