イーロン・マスク率いる宇宙企業スペースXは新規株式公開(IPO)の目論見書で、個人宇宙旅行向けの打ち上げを拡大する基本計画の詳細をほとんど明らかにしなかった。しかし、同社の超大型宇宙船「スターシップ」について宇宙ビジネスの専門家は、価格設定さえ適切なら「数千万人規模」の宇宙旅行者を生み出す可能性を秘めていると語る。
IPOの投資家向け説明会でスペースXは、夢のような未来のフライトの青写真を提示した。それはロケット推進のスターシップを活用して米ニューヨーク~仏パリ間や東京~米ロサンゼルス間を40分未満で結ぶ2地点間(P2P)輸送から、地球を周回するチャーター便まで多岐にわたる。
スターシップの乗客は「宇宙飛行士」と呼ばれる?
世界的に影響力のあるカナダの宇宙経済シンクタンク「New Space Economy(ニュー・スペース・エコノミー)」の創設者であるブライアン・ハーレーによると、スターシップは宇宙空間と大気圏の境界線とされる高度100kmを超えて飛行する可能性が高いことから、大陸をまたいだ大都市間フライトの多くは宇宙旅行との認識になるだろうという。
「もし高度100kmのカーマン・ラインを超えて飛ぶなら、その乗客とパイロットは皆、宇宙飛行士だと世界からみなされるようになるだろう」とハーレーは筆者とのインタビューで語った。
こうした弾道飛行(亜軌道飛行)は、米国と旧ソビエト連邦がかつて繰り広げた「第1次宇宙開発競争」の黎明期に宇宙へ飛び立った最初の米国人宇宙飛行士がたどった軌跡を彷彿とさせる。そしてスターシップの乗客らは、平等主義に彩られた「第2次宇宙開発競争」に参加する宇宙旅行者と位置付けられることになる。
世界中で台頭する独立系宇宙事業者とその技術的ブレークスルーをつぶさに記録しているハーレーは、「スターシップの2地点間輸送は超高速の亜軌道輸送であり、長距離路線では高度100kmを超えて」人類に残された最後のフロンティアである宇宙空間を高速で飛行するだろうと説明する。
「ファーストクラス並み」の運賃は実現できるか
国境をまたいだスターシップ旅行の予想運賃に関しては、スペースX創業者のマスクも、社長で最高執行責任者(COO)のグウィン・ショットウェルもこれまでのところ漠然と示唆しているのみだが、最終的には同一都市間のジェット旅客機のファーストクラス運賃より安価になるとの予想を示している。
これは、現時点で弾道宇宙旅行を提供している二大巨頭であるブルーオリジンとヴァージン・ギャラクティックが自社の宇宙船への搭乗チケット1枚につき数十万ドルを請求しているのと比較すれば、ほんの微々たる料金だとハーレーは言う。



