他方で、ルカシェンコ大統領は自国兵の派遣には慎重な姿勢を見せている。ベラルーシ軍では、同大統領がウクライナ侵攻を巡ってロシアを支援すると決定したことに抗議し、数十人の将校が辞職した。中には、自国軍を離脱し、ウクライナのために戦う志願兵の部隊に加わった兵士もいた。
抗議は軍内部にとどまらず、ベラルーシ国民の多くもウクライナ侵攻への自国の関与に反対している。英王立国際問題研究所(チャタムハウス)が2025年に実施した世論調査によると、ベラルーシ国民の4割が「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を支持しない」と回答した。このように、ロシアによるウクライナ侵攻を巡っては、多くのベラルーシ国民が反対しており、ルカシェンコ大統領が自国の関与を深めれば、自身の権力基盤を脅かす可能性がある。
同大統領は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がベラルーシの野党勢力との対話を開始したことも認識している。ゼレンスキー大統領は1月と5月、ベラルーシの反体制派スビャトラナ・ツィハノウスカヤと会談した。両者はベラルーシとウクライナの対立の激化に危機感を抱き、両国の関係の修復を望んでいる。
ゼレンスキー大統領とツィハノウスカヤの会談を受け、ルカシェンコ大統領が自国軍のウクライナへの派遣をちゅうちょした可能性もある。ロシアの軍事侵攻に加担すれば、国民から批判を浴びることになる上、ルカシェンコ政権打倒を目指す国内の反体制派の立場を強めることになるからだ。ルカシェンコ大統領はこのリスクを冒す意思はないようだ。
だが、同大統領が自らの権力と地位を維持しようとする一方で、ロシアはウクライナ侵攻への協力をベラルーシに迫り続けていると伝えられている。今回のルカシェンコ大統領とプーチン大統領による会談は事前発表がなく、ロシア大統領府(クレムリン)のドミトリー・ペスコフ報道官は首脳会談後の報道発表は行わないと説明した。
ロシアによるウクライナへの侵攻が続く中、プーチン大統領がルカシェンコ大統領との会談頻度を増やす可能性は十分にある。しかし、こうした会談がどのような結果をもたらすのかは、まだ見通せない。ロシアが経済的課題に直面し、多大な人的被害を出し続けている状況で、ウクライナ侵攻に対する追加支援を確保しようと努める中、プーチン大統領はルカシェンコ大統領を含む同盟国の首脳との会談を継続する可能性が高い。


