TSMCの2026年下半期ガイダンスで注目すべき点
設備投資
設備投資は、TSMCにとってリスクとリターンの両面を併せ持つ。同社の経営陣は、設備投資はより大きな成長機会と「常に相関している」と述べている。だが、巨額の設備投資を要するファウンドリ事業は、本質的にリスクが高い。需要が強い局面では、TSMCは生産能力を拡大すると同時に、より高速で効率的な処理を可能にする技術革新も進めなければならない。
第1四半期において、TSMCは2026年の設備投資予算がガイダンスで示した520~560億ドル(約8.42~約9.07兆円。1ドル=162円換算)の範囲の上限付近になると語った。このガイダンスレンジが引き下げられれば、成長見通しがより慎重になったシグナルとなる可能性がある。
AI・HPC・5Gの需要
TSMCは、AI、高性能コンピューティング、そして5Gの普及を業界を牽引するメガトレンドと位置づけている。AIを筆頭とするこれらのトレンドが生み出す需要が、同社の設備投資予算と業績見通しを突き動かしている。
2026年第1四半期の決算説明会で、TSMCのシーシー・ウェイ(魏哲家)会長兼CEOは、AI需要を「極めて旺盛」と表現した。アナリストらは、第2四半期のアップデートでも同様の力強い見解が示されると予想している。
先端パッケージングの生産能力
TSMCの先端パッケージング技術「CoWoS(Chip-on-Wafer-on-Substrate)」は、競合他社との差別化要因、そして同社の成長ストーリーとして存在感を高めている。CoWoSは、複数のチップを単一のユニットに統合して性能を向上させる業界標準の手法だ。
問題は、チップ自体の製造能力以上に、CoWoSの生産能力が逼迫している点にある。エヌビディアは、2026年までのTSMCのCoWoS生産能力の60%に加え、2026〜2027年の拡張分の半分以上をすでに予約していると報じられている。
CNBCによると、TSMCは米国アリゾナ州に先端パッケージング工場を建設するほか、「台湾で2つの新しいパッケージング工場の立ち上げを急いでいる」という。アナリストらは、これらの建設と立ち上げの進捗状況に関心を寄せている。
N2(2ナノメートル)立ち上げの進捗
「N2」はTSMCの最新世代のチップ技術であり、最も高い価格設定と利益率が期待される。前世代のN3、N4、N5は、高性能アプリケーション向けとしては処理能力や効率性で劣るものの、他の用途での需要は根強く残っている。
同社は2025年第4四半期にN2の量産を開始した。第1四半期の決算説明会でウェイは、スマートフォン、AI、HPCの需要に支えられ、2つの拠点でN2の立ち上げが順調に進んでいると述べた。アナリストらは、N2の利益率に関する追加データや、それが同社の全体的な収益性にどう影響するかに注目することになる。
粗利益率の見通し
TSMCは2026年第1四半期に粗利益率の上昇を記録し、第2四半期の粗利益率のガイダンスを65.5%から67.5%の範囲に設定した。同社は、N2の量産立ち上げに伴うコストにより、2026年通期の粗利益率が2~3ポイント押し下げられると予想している。海外工場の拡張も、別途、粗利益率を押し下げる要因となる。
TSMCが生産能力の立ち上げと最適化を継続する間、こうした利益率の押し下げは今後数年にわたり続く可能性がある。同社が2026年下半期のN2関連の利益率下押し幅をどこまで具体的に示せるかは、アナリストがその後の利益率ガイダンスを評価するうえで役立つだろう。


