米連邦準備制度理事会(FRB)を含む大半の中央銀行は、人工知能(AI)をいまだに研究テーマとして扱っている。韓国銀行(BOK)にとってAIは緊急課題だ。
韓国銀行は今年1月、世界で初めて中銀業務用に開発された機械学習モデルを導入した。AIブームが世界の市場をいよいよ揺るがし始める前のことである。AIが従来の政策枠組みでは追いつけないほどのスピードで韓国経済をつくり変えつつある現在から見れば、先見の明があったと言うべきかもしれない。物価の安定のために設立された機関はいま、にわかにまったく別の役割、つまり新たな事態へのリアルタイムの適応を求められているのだから。
問題は、1兆9000億ドル(約300兆円)規模の韓国経済を目の前でリアルタイムに変容させている、まだ効果のほどのはっきりしない技術革命に、韓国銀行がついていけるかどうかだ。
申鉉松(シン・ヒョンソン)総裁がオープンAIの「ChatGPT」やアンソロピックの「Claude(クロード)」、あるいは彼のチーム専用の内部AIモデル「BOKI(Bank of Korea Intelligence)」に「次に何が起こるか教えて」と尋ねて、答えを得られればよいのだが。だがAIツールも、わたしたちがこれまで知見を求めてきた経済界の長老たちと同じように限界がある。2026年の世界には、ソウルであれワシントンであれ、あるいはフランクフルトであれ、相談できるような老賢者もいない。
トランプ2.0の発足から1年半近くの間に、「前例のない」という言葉はすっかり使い古されてしまった。それでも、世界最大の経済大国の指導者が世界全体に対して関税戦争を仕掛け、中東では実際の戦火が続き、中国の“イノベーションマシン”はとどまるところを知らず、そして収益性がいまだ証明されていない技術が株式相場をくらくらするほどの高値へ押し上げている──そんな状況をほかにどんな言葉で形容したらいいのだろう。
AIが企業収益や生産性、人員配置、賃金、高頻度取引(HFT)の仕組みをどのように変えるかという問題は、ひとまず脇に置こう。また、現在行われている莫大なデータセンター投資はバブルであり、2008年の金融危機のような、あるいはもっとひどい崩壊に向かっていると投資家が判断した場合、資産市場に待ち受けている壮絶な調整についても、ここでは考えないことにする。



