同時に、韓国の「AI勝ち組」企業が従業員に支給を迫られている高額ボーナスは、アジアでもとくに過熱している不動産市場に新たな燃料を注いでいる。韓国の家計債務は2025年末時点で過去最高を更新し、借り手1人あたりの平均借入残高は約9720万ウォン(1050万円)にのぼっている。
ソウルの住宅市場から締め出される若者は、危険なほどの勢いで増えているに違いない。同じような格差は韓国の社会全体にも広がりつつある。2026年に入る前から韓国総合株価指数(KOSPI)の構成銘柄を相当額保有していた人は、大きな恩恵に浴している。KOSPIは6月につけた9000超の史上最高値から大幅に下落しているものの、それでも年初に比べれば73%高い水準にある。
こうした状況のなかで、韓国銀行がAIによって韓国経済の仕組みが変わりつつある現実に適応しようとしている姿勢は心強い。近年の韓国大統領に対する評価はともかく、韓国は中銀総裁には恵まれてきたと言える。
4月21日に韓銀総裁に就任した申は、まだ船出したばかりだ。しかし、前任の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は、アジアでも屈指の堅実な金融政策手腕を発揮した。李は2022年から2026年の在任中、新型コロナウイルス禍から貿易戦争、大統領による「非常戒厳」宣言、さらにはイランでの交戦にいたるまで、数々の難局に見舞われながら韓国経済を支え続けた。韓銀が国内インターネット大手のネイバーと組み、独自のAIモデルを構築することを承認したのも、彼の功績にひとつに挙げられる。
とはいえ、投資家がAIブームをどのように評価すべきか模索するなかで、2026年後半の韓国市場は大きな変動に見舞われる可能性がある。韓国取引所のサーキットブレーカーは過去に12回発動されているが、うち6回は今年発生している点にも留意しておこう。もっとも、現在進行しているのは世界規模の話だ。韓国は、ほかの国々にも近々起こるかもしれないことを、一足先に経験しているにすぎないのだ。


