押さえておきたいのは、韓国がこうしたもろもろの問題の最前線に立っているという点だ。世界の上位15の経済大国・地域のなかで、韓国ほど急速にAIによって変貌している国はないと言っていいだろう。これほどの変化は、5100万人の韓国国民も年初時点では予想していなかったかもしれない。
AIは台湾経済にとっても急速に中心的な柱のひとつになりつつある。いや、半導体輸出が爆発的に増えるなか、この分野は「大黒柱」に成長していると言うべきかもしれない。台湾の5月の輸出は半導体にけん引され、前年同月比で51.7%増えた。4月にも40%近い伸びを記録していた。台湾の2026年1〜3月期の域内総生産(GDP)は前年同期比約13.7%増え、1987年以来の高い成長率を遂げている。AIの追い風がさらに強まった4~6月期のGDPがどれほどの数字になったのかは、神のみぞ知るところだ。
韓国に話を戻すと、6月の輸出は前年同月比で70.9%も増え、じつに1978年以来の高い伸びとなった。5月も53.4%増だった。このような驚異的な伸びははたして持続可能なのだろうか。もし持続可能だとすれば、申はどのように対応すべきなのか。
かつてであれば、韓国銀行は熱狂を抑えるため利上げに動いたところかもしれない。しかし2026年には、旧来の「オールドエコノミー」型の鈍重な政策ツールである政策金利を調節した場合、主に海外の需要に支えられたテクノロジー主導の“ゴールドラッシュ”にどんな影響を与えるのかは読みにくい。利上げを急ぎすぎれば、韓国が真の世界的リーダーになる好機を台無しにしたとのそしりを韓銀は受けかねない。一方で何もしなければ、「根拠なき熱狂」を野放しにする危険がある。
この点では、BOKIもまだあまり役に立ちそうにない。その間もAIは、2026年の韓国が抱える2大課題を急激に悪化させている。一握りの巨大企業への極端な集中と、住宅価格の高騰である。
アジア通貨危機以来の29年間、韓国の歴代大統領は、「チェボル(財閥)」と呼ばれる少数の同族企業グループに牛耳られた経済構造の是正に取り組むと公約してきた。ところが、AIブームで主に潤っているのはまさにサムスン電子やSKハイニックスといったチェボルであり、その影響力は株価の上昇と歩調を合わせて強まっている。


