背景にある培材高の「校風」論争
問題の掛け声を先導した培材高校の選手は「正確な意味を知らない状態で、もともとあった別の応援歌を替え歌にして歌った」という趣旨の供述をしたというが、それで収まる話ではなかった。
培材高校はソウルの江東区に位置し、韓国の名門私立高校として知られる。運営母体の「培材学堂」は、初代大統領の李承晩(イ・スンマン)と縁が深い学校財団だ。
校内には李承晩の銅像が建立され、財団が長年にわたってその顕彰活動を続けているという背景もあり、一部メディアからは「今回の出来事は偶発的な逸脱ではなく、校風そのものに根ざした必然的な事故ではないか」という踏み込んだ指摘もなされている。
また、同様のパターンが複数の試合にわたって繰り返されていたとすれば、これが野球部内で一種の「レパートリー」として定着していた慣行だった可能性も示唆している。光州地域の学校と対戦する際に、あらかじめ準備された計画的なカードとして使われてきたのではないかという疑念も提起された。
さらに、競技中にこの応援が始まった際に監督やコーチが即座に止めなかったという事実も、偶発的な事故ではないという疑いを深める材料となった。指導者が知り得ない場所にいたわけではなかった点、そして知りながらも止めなかったとすれば、この応援文化が選手団内で少なくとも黙認されていた可能性を示唆している。
大韓野球ソフトボール協会(KBSA)は7月1日、緊急の「スポーツ公正委員会」を開催し、培材高校に「全国大会出場停止6カ月」という重い懲戒処分を下した。この懲戒処分は即日発効され、翌日に予定されていた青龍旗2回戦は没収試合扱いとなった。
この結果、培材高校は7月の大統領杯、8月の鳳凰大旗、10月の全国体育大会まで、今シーズンの主要大会すべてに出場できなくなった。
一方、選手個人および指導者への懲戒は今回の決定には含まれず、出場停止期間中に詳細な調査を行い、対象者を特定したうえであらためてスポーツ公正委員会を開いて審議するとされた。
さらに、世論に敏感なプロ野球球団が培材高の選手を指名することに難色を示すことも避けられず、KBO(韓国野球委員会)の規約上は校内暴力のみが新人ドラフト参加制限の基準として定められているが、この騒動のなかで培材高の選手を指名する球団が現れる可能性は極めて低い。
高校から直接、あるいは大学経由でプロを目指していた選手たちの将来に、計り知れない影響が及ぶことにもなった。
7月6日、培材高校の野球部選手全員と指導者、保護者、教職員ら計86名が光州に向かい、光州第一高校を訪問して謝罪した。培材高校の野球部主将が「不適切な発言と行動で心に大きな傷を負わせた光州第一高校の選手・保護者、光州市民に心からお詫び申し上げる」と謝罪文を読み上げた。
指導者も「相手への敬意など、学生選手として持つべき姿勢について正しく指導できなかった」と反省の言葉を述べ、学校関係者や保護者のなかには涙を流す者もいた。
謝罪訪問の後、両校の選手団は「国立5・18民主墓地」へ移動して参拝した。白いシャツを着た培材高の学生たちが菊の花を手に順番に献花した。5・18記念財団は培材高校の野球選手団に、5・18を題材にした作家のハン・ガンの小説『少年が来る』と、5・18をテーマにした歴史教科書を提供した。ソウルと全南光州の両教育監もこの参拝に同行した。
光州第一高校の校長は「培材高校の学生たちが過ちを悔い、心から和解を望んでいると感じたので、謝罪訪問を受け入れることにした」と述べ、「この和解を機に学生たちが新たに出発してほしい」と語った。
しかしその一方で、週末には「光州第一高校に爆発物を設置した」とするオンライン投稿が警察に通報され、教職員と生徒20人余りが避難する騒ぎも起きた。警察は捜査に乗り出し、関連する脅迫や誹謗中傷の書き込みに対しても厳正に対応すると表明した。


