人工知能(AI)に関するニュースがこれほど世間を賑わせていると、私たちの頭脳がいかに強力なプロセッサーであるかを忘れがちになる。「日本では、研究者が別のスーパーコンピュータ『京』を使用し、人間の脳活動の1秒間をシミュレートした」と、学術誌『The Fountain』は伝えている。top500.orgによると、人間の脳が「わずか1秒の1%に相当する脳活動」で処理できるデータを模倣するだけでも、スーパーコンピュータで40分間の計算時間がかかるという。
私たちは日々、それほど膨大な精神的能力を持ち歩いていることになる。その規模を実感するには、2024年にハーバード大学とグーグルの研究者が、人間の脳はおよそ1.6ゼタバイトの記憶容量を有すると結論づけたことを考えてみるとよい。それは「140エーカーに及ぶデータセンターに匹敵し、地球上で最大のデータセンターとなる」とTom's Hardwareは伝えている。
それにもかかわらず、LinkedInをいつ開いても、AIが生成したコンテンツが果てしなく並ぶ光景に必ず出くわす。それらは軽蔑を込めて「スロップ(残飯)」と呼ばれ、メリアム・ウェブスター(Merriam-Webster)の「今年の言葉」にも選ばれた。
問題は、AIが賢さを民主化してしまったことだ。誰もが表面的には気の利いたマーケティング投稿を量産できるようになった。同時に、優れた生成ツールは、世界トップクラスの画像や動画を作り出すこともできる。
では、なぜ私たちは(映画『グラディエーター』のセリフを借りるなら)「楽しめない」のだろうか。
おそらく、1.6ゼタバイトの記憶容量を持つ私たちのプロセッサーが、今日のマーケティングの会話に何かが欠けていることを感じ取っているからだろう――人間らしい何かが。
私は先日、デジタルマーケティングの先駆者であるニール・パテル(Neil Patel)にこのテーマについてインタビューを行い、特にAIが事実上何でも作り出せる時代に、マーケターはギャップを埋めるためにどのようなスキルを磨くべきか尋ねた。私は彼が、プロンプトエンジニアリングやデータ分析といった「実用的な」何かを提案すると予想していた。
しかし、彼の答えは一言だった。センス(Taste)だ。
残念ながら、それはほとんどのマーケターが十分に鍛えたり考えたりしていないスキルだ、と彼は語る。AIが考え得るあらゆるテーマについて膨大な情報とアウトプットを提供できる現状を考えれば、これは深刻な問題だ。
「AIは5個、10個、さらには100個もの異なるバリエーションを提示してくれる。素晴らしいものを生み出すこともあれば、ひどいものを生み出すこともある。唯一無二の人間としての経験とスキルセットがあって初めて、私たちは見極めることができ、『これを使うべきだ』と判断できる」とパテルは言う。
彼の指摘通り、人間の「センス」こそが、これからのマーケターにとって真の競争優位性になり得るのだろうか。
ベストセラー作家のダン・ピンク(Dan Pink)はそう考えている。2026年、『Inc.』誌はピンクがオハイオ州のコロンバス・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインで行った卒業式の祝辞を報じた。その中で彼は卒業生に対し、いま突如として実用的とみなされるようになった、いわゆる「ソフトスキル」に注力するよう説いている。「この素晴らしい学び舎での4年間、皆さんはアニメーション、ファッション、映画、写真、グラフィックデザイン、ゲーム、美術のスキルを築いてきた。だが気づいていないかもしれないのは、そのすべてのおかげで、皆さんはもっと重要なものを手に入れたということだ。皆さんはセンスを育てた。審美的判断力を育てた。ものの見方を育てたのだ」
ピンクはさらに、センスは「あなたを救う。私たち全員を救うかもしれない」とまで述べた。こうした洞察、特にこれからの職業的優位性としてリベラルアーツ(一般教養)科目を学ぶことの重要性は、私自身がForbesで行ってきた報道とも共鳴する。
パテルの洞察に戻ると、彼はセンスが「何ではないか」を慎重に指摘している。それはエリート主義を漂わせる気取った美意識でも、独善的な芸術的こだわりでもない。むしろ彼が推奨するのは、文脈に応じた判断力、パターン認識、そして何が重要で、何を無視してよいかを見極める力を発揮することだ。
「批判的思考(クリティカルシンキング)は、どのアウトプットが良く、どれが悪いかをより良く理解し、判断するのに役立つ」とパテルは言う。センスのある有能なマーケターは、表面的なデータにとどまらず、より広い文脈を把握する。例えば、売上パフォーマンスの急激な上昇や下落は、キャンペーンそのものよりも、選挙や休日シーズン、コロナ禍のような世界的な出来事、あるいはAIが十分に理解できない文化的な瞬間といった外部の要因に関係している可能性が高い。
意味のあるデータと無意味なデータのこの区別は、数学者クロード・シャノンが定式化したコミュニケーションの概念である「シグナル(信号)とノイズ(雑音)」を思い起こさせる。「彼の理論の核心は、シンプルだが非常に一般的なコミュニケーションモデルである。送信機が情報をシグナルにエンコードし、それがノイズによって歪められ、受信機によってデコードされる」と『クアンタ・マガジン(Quanta Magazine)』は説明している。つまり、あらゆるメッセージの価値ある部分であるシグナルは、ノイズに容易にかき消されてしまう。センスのあるマーケターは、ノイズの先を見通し、オーディエンスにとって意味があり、関連性があり、価値のあるものを見つけ出すことができる。
残念ながら、私たちの教育制度はこうした批判的思考を重視していない。「問題は、多くの若者が頭を使って批判的に考えていないことだ」とパテルは指摘する。「彼らはただ、AIから出力されたものをそのまま受け入れることを学んでいる。それは彼ら自身にとって不利益なことだ」
「認知的オフロード(Cognitive offloading)」は、学術界や職場を揺るがしているこの問題を的確に表す用語だ。マグロウヒル高等教育(McGraw Hill Higher Education)は、SBSスイス・ビジネス・スクールのゲルリッヒ(2025年)による研究を引用し、AIツールへの過度な依存が批判的思考力を蝕んでいることを明らかにしている。「効率的に思考を代行してくれるツールが手元にあれば、思考の負荷を減らしたくなるのは人間として自然な傾向だ。しかし、それを繰り返すと認知的萎縮を招くことが研究によって示されている。使われない筋肉が痩せていくのと同じだ」
パテルは、現代の学生が判断力を養うべきまさにその時期に、判断を外部に委託することで精神的な萎縮を助長しているのではないかと懸念している。「宿題をそのままAIのチャットボットにコピーし、その答えが正しいかどうかをほとんど省みずに受け入れている学生のことを考えてみてほしい」
これは、人間の脳の力という話に戻る。私たちはこの議論の冒頭で、人間の脳の知的能力をデータセンターと比較した。データセンターは、私たちの経済がこの技術と密接に絡み合うにつれて、全米で急速に増加している。人間の能力に関する報告は間違いなく、努力を前提とした典型的な人間の脳の能力を想定している。しかし、私たちが脳のスイッチを切り、思考をコンピュータにアウトソーシングして、それほど努力しなくなったらどうなるだろうか。
答えは簡単だ。認知能力は衰える。批判的思考も同様だ。それは、センスを育み、実行するために不可欠な、人間ならではの能力である。言い換えれば、私たちは自らの才能を、最も浪費してはならないときに浪費しているのだ。
この危険性にもかかわらず、パテルは今後の展開を楽観視している。「将来、特にマーケティングにおいては、人間とAIの組み合わせが鍵になると考えている」と彼は言う。「人間が持つ創造性、特に常識にとらわれない思考力は素晴らしいものだ。日々高まるAIの可能性と、人間を組み合わせれば、可能性は本当に無限大だと私は確信している」



