熟練人材不足が深刻化
建設需要の拡大とともに、熟練人材の不足も深刻になっている。アジア市場の90%が、熟練労働者不足は建設プロジェクトに「大きな影響」または「深刻な影響」を与えていると回答している。特に不足しているのは、空調や電気、給排水・配管設備などを担当する専門人材だ。建設業界ではこれらを機械設備・電気設備・配管設備の頭文字を取って「MEP」と呼んでいる。データセンターでは、大量の電力設備や冷却設備、非常用電源などが必要となるため、MEPの専門技術者は欠かせない存在となっている。今回の調査では、アジア市場の82%が、このMEP人材の不足を報告した。
また建設資材などの投入コストは過去1年間で比較的安定していた一方で、人材確保が難しくなったことで、人件費が世界の建設コストを押し上げる主な要因となっている。
日本5都市が世界上位に
日本では、複合用途開発と商業オフィス開発が建設活動の上位を占め、データセンター、産業・物流、交通・モビリティが同率3位で続いた。建設コストでは、日本の5都市が世界112市場の上位15位以内に入った。建設コストとは、建物を建設する際に必要となる資材費や人件費、設備工事費などを含めた費用のことだ。
東京は1平方メートル当たり5801.2米ドルで世界7位、アジアでは最も建設コストが高い市場となった。大阪は5539.6米ドルで世界8位、札幌は5476.9米ドルで9位、福岡は5293.8米ドルで11位、広島は5272.9米ドルで12位だった。
日本国内のすべての調査市場で、2026年の建設コストの上昇率は2025年を上回る見通しとなった。東京と福岡は6.0%、大阪は5.9%、札幌は5.6%となる見込みで、広島はアジア最高となる6.2%が予測されている。大阪では2025年の3.6%から5.9%へ、広島では4.0%から6.2%へ上昇する見通しで、2027年には日本全体でインフレ率は低下に転じると予測している。
AIインフラ拡大で人材需要も高まる
ターナー&タウンゼントのリアルエステート・コストマネジメント担当ディレクターであるベン・サムウェイズ氏は「世界の建設市場ではデータセンターをはじめとするAI関連分野への投資が拡大する一方で、労働力不足やサプライチェーンの不安定さ、地政学的リスクなどが建設市場に大きな影響を及ぼしている」と分析している。日本ではデータセンター市場が急速に拡大しており、建設に必要な熟練人材の確保が需要の伸びに追いつかないリスクが現実的な課題になっているという。
また、日本の建設市場はデータセンターや産業・物流分野を中心に新たな成長局面を迎える一方で、労働力不足による建設コストの上昇圧力が続き、日本はすでに世界でも建設コストが高い市場のひとつになっていると指摘。
そのうえで、AIは建設業界に新たな雇用を生み出す可能性があるものの、その効果を十分に生かすためには人材育成や採用体制の整備が欠かせないとしている。さらにグローバルに事業を展開する企業は、建設コストだけでなく金利や労働力の確保、サプライチェーンのデジタル成熟度なども踏まえながら、各国でプロジェクトを計画する必要があると述べた。
AIの普及はデジタル技術だけで完結するものではない。データセンターをはじめとするインフラ整備を通じて、建設市場にも大きな変化をもたらしていることが、今回のレポートから見えてきた。


