AMD(ティッカー:AMD)はこの1年で株式価値をほぼ4倍に伸ばし、時価総額は9000億ドル(約145.8兆円。1ドル=162円換算)に迫っている。
この急騰を支える要因は明白だ。
AMDのEPYC CPUはインテル(INTC)からサーバー市場のシェアを大きく奪っており、AIワークロードの拡大が、通常の景気循環を超えたCPU需要の構造的な回復を後押ししている。GPUについていえば、AI・エンタープライズ向けGPU「Instinct」シリーズの最新製品であるMI400は、AMDがこれまでに投入した中で最も強力な製品であり、筆者は、その仕様を受けてエヌビディア(NVDA)は競争力を維持するためだけにメモリー帯域幅と電力容量の強化を余儀なくされたと見ている。ハイパースケーラーのコミットメントも本物であり、拡大を続けている。メタ1社だけでも最大6ギガワット分のInstinct GPUを導入する計画で、ハイパースケーラー各社が今年表明したAIインフラ設備投資は総額7000億ドル(約113.4兆円)を超える。
強気の見方には説得力がある。
チップの魅力は高まる一方だ。顧客の意欲も固い。CPU部門も同時に構造的な回復局面にある。株価が2026年予想利益の70倍超で取引されている以上、市場はこうした要因をすべて認識している。
だが、市場が見落としている可能性があるのは、需要とは無関係の問題だ。
TSMCの先端パッケージングCoWoSは2026年まで予約完売、リードタイムは52〜78週
従来型のCPUとは異なり、AIアクセラレーター(AI処理に特化した半導体)は、演算ダイと高帯域幅メモリー(HBM)を緊密に統合することで性能のかなりの部分を実現している。その統合を可能にするのが先端パッケージング技術だ。具体的には、TSMCのCoWoS(複数のチップレットを基板上で一体化する先端パッケージング技術)こそが、チップレットを結合して完全なAIアクセラレーターに仕上げることを可能にしている。これがなければ、半導体工場で製造されたシリコンは事実上何の役にも立たない。現時点で、TSMCの最先端に匹敵する水準の先端パッケージングを提供できるメーカーは他に存在しない。TSMCのCEOは2026年6月4日、株主に対し、CoWoSの生産能力は依然として極めて逼迫しており、2026年いっぱいまで予約で埋まっていて、リードタイム(発注から納品までの期間)は52〜78週に及ぶと説明した。
これは一過性のボトルネックではない。増設に必要な装置の調達と設置には数年を要するため、この制約は今後数年間、ほぼ固定されたままになるとみられる。
エヌビディアがCoWoSの約60%を確保、一方AMDは約11%
この限られた生産能力の配分状況を見ると、エヌビディアがCoWoS生産全体の約60%、およそ59万5000枚のウエハーを押さえており、2026〜2027年のTSMCの増設分についても、すでに半分以上を確保している。上位3社の顧客だけで総生産量の85%超を占める。一方、AMDが確保しているのは約10万5000枚、総需要の約11%にすぎない。もはやAIにおいて足りないのは需要ではない。パッケージング能力こそが不足しているのだ。
インテルはファウンドリー(半導体受託製造)事業の構築に巨額の投資を振り向けており、これが同社の株価上昇の一因となってきた。だが、より差し迫った問いは、インテルの生産能力が確約済みの外部顧客に裏打ちされているかどうかである。



