山積するロシアの経済的課題
ロシアは米国のイラン攻撃により一時的に息をつくことができたものの、石油収入を軍事力に転換することに苦戦している。その理由の1つは、死傷者の増加に伴う労働力不足だ。死傷者と行方不明者は現時点で推定140万人を超えており、ロシアは新たに補充できる人数を上回る兵力を失っている。軍需工場で働く労働力も必要とされているが、同国はこうした人材の確保にも苦慮している。さらに、国外に脱出したロシア人は65万人以上に上り、同国は頭脳流出にも悩まされている。
ロシア経済のもう1つの問題は物価の高騰だ。インフレ率は5カ月ぶりの高水準となる6%に上昇し、サービス業では10.6%に達している。主要な消費財の価格も高騰しており、24~26年の間に食品価格は18%上昇した。
残念ながら、ロシア経済はこうした物価上昇を補うだけの十分な収入を生み出していない。ロシアの限られた資源はすべて軍事生産に割り当てられている。また、戦時経済へと移行しようとしているものの、これは冷戦時代よりはるかに困難な課題となっている。同国は現在、軍事生産に必要な資材を市場価格で購入しており、大半は外国の供給業者から調達している。このため、軍事支出は冷戦時代と比較しても大きく拡大している。当時、ソビエト連邦の軍事支出はGDPの20%程度を占めていた。
一方、ロシアの民間部門は崩壊の危機に瀕している。民間企業はウクライナ侵攻の影響で跳ね上がった賃金で人材を奪い合い、20%近い高金利で借入を余儀なくされ、需要が低迷する市場で製品を販売している。医薬品と輸送機器を除く19の民間部門で生産量が減少している。つまり、ロシアは二重の課題を抱えている。経済の軍事部門が過熱している一方で、民間部門は停滞しているのだ。
前述したように、金利も問題となっている。政策金利は6月に25ベーシスポイント引き下げられ、現在は14.25%となっている。ロシア中央銀行は金融緩和策を講じているものの、借入コストは依然として極めて高く、ウクライナと同水準にある。
危機の際には、経済の安定を確保するための安全資産として金(ゴールド)が用いられることが多い。だが、1月にはロシアが戦費調達のために金準備の71%を売却したと報じられた。ロシアは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)後にGDPが5%以上回復するなど、力強い復興を遂げていたが、わずか5年でその成果を台無しにしてしまった。
ロシア経済が現在、深刻な圧力にさらされていることは疑いの余地がない。同国は当面の間はウクライナ侵攻に必要な資金を調達できるだろうが、米国がロシアと取引のある国や企業に対する制裁を強化することで、輸出収入や重要な輸入品の確保にさらなる圧力がかかる可能性がある。プーチン大統領はウクライナ東部ドンバス地方全域の掌握という自身の要求が満たされるまで戦争を終結させたくないかもしれないが、それは間違いなくロシア経済に多大な代償を強いることになるだろう。


